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 人気グループSMAPの分裂騒動は、スポーツ紙やテレビが連日、トップで扱うなど社会的な「事件」になった。彼らは、なぜここまで大きな存在になったのか。

■アイドルがまとう悲劇性 作家・林真理子さん

 SMAPの魅力は、演劇性をまとっていることだと思います。もとは普通の事務員だった1人の女性と、マネジャーすらつけてもらえなかったアイドルグループ。事務所の傍流だった彼女と彼らが組んで、トップスターへと駆け上がった。

 しかし、存在が大きくなるにつれ、独自の戦略を持つ彼女とカリスマ創業家の間に軋轢(あつれき)が生まれた。事務所のスターが総出演する年末のイベントにも出ない。そしてマネジャーと子飼いのスターは独立を企てて敗れた。傍流タレントがスターの座をつかむ物語であり、1人の女性がエンターテインメント界伝説の経営者と戦った歴史でもある。

 最近はインターネットで、虚実ない交ぜのいろんな話が伝わるでしょう。みんな、そんな裏話までよく知ってるのね。スポーツ紙は連日、1面で書いていたし、NHKでもやっていました。彼らと彼女にまつわるいろんなことが語られて、SMAPの物語を悲劇性をも備えた大きなものにしたんじゃないかしら。日本人は判官贔屓(ほうがんびいき)でしょ。そういうの好きなのよ。そうね、源義経ね。「嵐」は育ちのいい明るい嫡男(ちゃくなん)という感じ。そこが魅力ではあるんだけど、悲劇性は感じられないものね。

 私は、SMAPをデビューから知っていて、コンサートにもよく行きました。「世界に一つだけの花」なんて、ホント、いい歌で、音楽の教科書にも載っています。マネジャーにはお目にかかったことがあります。プロデューサーとしては超一流。聡明(そうめい)で気配りができるすごくすてきな女性です。経営者の寝首をかこうなんて気持ちはまったくなかったと思います。

 今回の騒動は本当に悲しい。生木を裂くような感じだった。人気グループって、熟した柿が枝から落ちるように解散するのが本当だと思います。沢田研二のザ・タイガースやピンクレディーがそうでしたね。あんな感じの解散なら、一生懸命がんばった、わかるよって、ファンも納得するんです。

 5人が謝罪する姿は生放送で見ました。急いで帰ってね。もう可哀想で見ていられなかったです。無理に言わされているようで……。でも、それが復帰の条件だったのね、きっと。私も切なくなっちゃったわ。納得? してません。

 たくさんのファンの力もあって、分裂も解散もなくなりました。でもね、ちょっと複雑なのよ。素直に喜べない。やっぱりSMAPは5人でいてほしいという思いの一方、4人で飛び出しちゃえばよかった、という気持ちもある。いっそ5人でまったく一から独立っていうのは、ダメかしら。そんな思いが、また彼らを苦しめるのかもしれない。あぁ、本当に複雑な気持ちです。(聞き手・村上研志)

     ◇

 はやし・まりこ 54年生まれ。86年直木賞受賞。著書に「マイストーリー 私の物語」など。「SMAP×SMAP」には3度出演。

■捨てられなかった居場所 批評家・濱野智史さん

 あの謝罪、私も見てしまいました。周囲に聞くと、ふだんテレビを見ないような人まで見ている。「国民的」という形容詞を使ってもおかしくない存在だということを図らずも示してしまった。

 SMAPは、ある意味で、「失われた20年」の日本社会の変化を象徴した存在です。1990年代以降、コミュニケーション力が非常に重視されるようになりました。仕事でも恋愛でも「コミュ力」の高さが求められるようになる。そういう時代に最初に適応したアイドルがSMAPです。「SMAP×SMAP」では、彼らがホスト役になってゲストをもてなす。それまでのアイドルにはないコミュ力をアピールすることで、国民的な人気を得た。

 ところがあの謝罪では、コミュ…

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