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 政務活動費913万円の詐欺罪などに問われた元兵庫県議・野々村竜太郎被告(49)の初公判は26日午後も神戸地裁で続いた。起訴内容をめぐり、捜査段階から一転して否認した被告は被告人質問で「記憶にない」「覚えていません」などの答えを90回以上にわたり繰り返した。地裁は2カ月間の勾留を決め、被告は身柄を拘束された。

 日帰り出張344回分のうその証明書類を作成したとされる点について、検察側は「2013年4月に福岡や東京、兵庫・城崎にほぼ毎日出張を繰り返した記憶はあるか」と質問。被告は何度も「覚えておりません」と述べた。弁護側が尋ねると「行ったことがあると言われれば行ったような気持ちになり、行かなかったと言われれば行かなかったような気持ちになります」と答えた。

 領収書の改ざんについても、単価と数量が修正テープで隠されたレシートの写しを検察側から示されて追及されたが、記憶にないと回答。また、思い出す時間がほしいと求める被告に佐茂(さも)剛(たけし)裁判長が「難しいことではない。記憶にあるかないかはすぐ答えられる」と問いただす場面もあった。

 野々村被告は、捜査段階で容疑を認める反省文を検察側に提出。これについて弁護側の質問に「反省すれば理解してもらえると思った。うそ偽りであり、非常に後悔している」と述べた。さらに昨年12月、医師から記憶障害の可能性があると診断されたと説明。弁護側は2月22日の次回公判で、医師の診断書を提出する考えを示した。

 野々村被告は次回以降の公判に必ず出廷するとの意思を示したが、佐茂裁判長は3月25日まで2カ月間の勾留を職権で決定。逃亡のおそれもあると判断したとみられる。閉廷後、被告は神戸拘置所に収容された。(佐藤啓介)

 検察官「こんなに頻繁に出張に行きましたか」

 野々村被告「覚えておりません」

 検察官「そんな程度の記憶もないのですか」

 野々村被告「そんな程度の記憶もございません」

 短く刈り込んだ頭に黒いスーツで初公判に臨んだ被告。東京や福岡などへのカラ出張で政活費を詐取したとされる点について、検察側や弁護側から被告人質問で尋ねられたが、一貫して「思い出せない」。使い道を問われても「覚えていない」「質問の意図がわからない」と繰り返した。

 問いかけに「記憶を確認します。しばらくお待ち下さい」とうつむく。十数秒の沈黙。「思い出せません」。そんなやりとりが続き、裁判長もしびれを切らす。「記憶がないのか、言いたくないのか」と割って入ると、被告は「記憶がございません」と返した。

 一方、捜査段階の取り調べに対する不満は、はっきり口にした。「主張が認められなかった」「恐怖と不安でいっぱいでした」

 約2時間半に及んだ被告人質問。いすから立ち上がった被告はよろめき、手荷物を抱えて小走りに退出。その後、勾留先の神戸拘置所に車で移送された。

 傍聴した市民は裁判をどう見たのか。神戸市須磨区の主婦、高田智美さん(46)は「政治家って、こうなの?」とあきれた表情。被告の人物像を知りたくて、初めて地裁に足を運んだ。「有権者も候補者を見極めないといけない」

 書き留めたメモを見返しながら憤るのは、兵庫県加西市の自営業、前野睦(むつみ)さん(47)。「『覚えておりません』は50回以上。本当なのか。正直に発言して、一からやり直してほしい」

 現役の兵庫県議も「有権者は納得しない」と突き放す。「裁判で新たな抜け穴が見つかれば、また制度を見直さないといけない」との声も。傍聴した丸尾牧県議(51)は「説明責任を果たすことが元議員としての最後の責務だ」と話した。