[PR]

 防衛省が、民間の船員を予備自衛官として有事に活用する計画を進めている。志願は強制しないとしているが、船員の組合は「会社に言われたら拒否できず、事実上の徴用だ」と反発。第2次世界大戦では多くの民間船が国に徴用され、船員約6万人が犠牲になった。その悲劇が繰り返されかねないと危機感を抱く。

 尖閣諸島をめぐる日中間の緊張の高まりから、防衛省は2013年末、尖閣など南西諸島の有事の際、ミサイルや戦車などの部隊を本土から移動させる計画を作成。だが、海上自衛隊が保有する大型の輸送艦は3隻しかないため、有事には民間船を借り上げ、海自が運航する契約を今月中にも結ぶ予定だ。

 大型民間船を運航するには、船舶職員法に基づく「海技士」の資格を持つ船員が必要で、防衛省の想定では1隻あたり21人。だが、この資格を持つ元海上自衛官の予備自衛官は約10人にとどまる。そこで防衛省は、民間の船員も10日間の訓練で海自の予備自衛官になれる制度を16年度から始めることにし、訓練費を16年度予算案に盛り込んだ。

 これに対し、全国の船員約2万5千人でつくる全日本海員組合は「船員の声を全く無視した施策が進められてきた」などとする反対声明を1月29日に発表。田中伸一組合長代行は「私たちは戦地に行くために船員になったわけではない。形式的に船員を予備自衛官にしても、民間人が戦争に巻き込まれることに変わりはない」と憤る。「船員はチームプレーの仕事。会社から『予備自衛官になるか』と言われたら、1人だけ拒否するのは難しい」

 組合が反発を強めるのは、第2次世界大戦時の苦い経験があるためだ。国家総動員法などに基づき多くの民間船が国に徴用され、十分な護衛もないまま1万5千隻余が撃沈されたという。公益財団法人「日本殉職船員顕彰会」によると、船員の犠牲は6万609人で死亡率は43%。陸軍の20%、海軍の16%を上回る。