[PR]

 北朝鮮は7日午前9時半ごろ、北西部の平安北道(ピョンアンブクト)・東倉里(トンチャンリ)から「人工衛星の打ち上げ」と称して長距離弾道ミサイルを南に向けて発射した。機体は沖縄上空を通過して飛行。韓国政府は機体の一部が宇宙空間で軌道に乗ったとみている。北朝鮮は1月6日の4回目の核実験を受けて高まった国際社会の非難を無視した形で、今後は国連安全保障理事会が、実効性ある制裁で合意できるかが焦点となる。

 北朝鮮が長距離弾道ミサイルを発射するのは2012年12月以来。日米韓は今回の発射が成功したかどうかに加え、発射能力がどの程度向上したかや安全保障に与える影響について分析を進めている。

 北朝鮮は1月6日の核実験強行に続いて、核兵器の運搬手段である長距離弾道ミサイルを発射することで、「核保有国」としての立場を内外に誇示するねらいがあるとみられる。16日が金正恩(キムジョンウン)・第1書記の父、故金正日(キムジョンイル)総書記の誕生日にあたり、5月には36年ぶりに朝鮮労働党の党大会を開く。このタイミングで国威を発揚し、正恩体制への結束を強める意図もうかがえる。

 防衛省によると、今回の発射でミサイルの機体は分離し、四つが落下した。うち一つは北朝鮮が事前に国際機関に通知した予告区域外に落ちた。また、韓国国防省によると、1段目は分離した後に爆発し、270以上の破片が飛び散ったという。韓国の情報機関、国家情報院は国会報告で推定飛距離は5500キロ以上とみていることを明らかにした。船舶や航空機などへの被害は確認されていない。

 国際機関に通知していた落下予告区域が前回とほぼ同じことなどから、今回発射したのも「テポドン2号改良型」とみられる。韓国の韓民求(ハンミング)国防相は7日、開発が完了すれば射程は米本土に届く1万2千~1万3千キロになるとの見方を示した。

 一方、北朝鮮の朝鮮中央テレビは7日正午(日本時間午後0時半)から「特別重大報道」で発射について伝えた。金正恩氏が打ち上げの命令書に署名する写真を放映し、国家宇宙開発局が運搬ロケット「光明星号」を打ち上げ、地球観測衛星「光明星4号」を高度500キロの軌道に進入させるのに完全に成功したなどと報じた。

 長距離弾道ミサイルの発射をめぐり北朝鮮は今月2日、国際機関に対し、8~25日の日本時間午前7時半~午後0時半の間に「衛星を打ち上げる」として、落下予告区域を通知していた。だが6日になって急きょ、期間を「7~14日」に変更。朝鮮半島の緊張を高めることになるとして、日米韓中は発射を自制するよう求めていた。

 北朝鮮はこれまでの安保理決議で弾道ミサイル技術を利用したすべての発射が禁じられている。ロケットによる人工衛星の打ち上げと弾道ミサイルの発射は技術的には同じであり、今回の発射も安保理決議に違反する。

 米韓両政府は7日、北朝鮮の長距離弾道ミサイル発射を受け、米国の高高度迎撃ミサイルシステム「THAAD(サード)」の韓国内への配備について正式に協議を行うことを発表した。

 さらに韓国国防省は今後の対応として、「最先端で最大規模」という米韓合同軍事演習を3月7日から4月30日まで実施することを明らかにした。米軍も戦略爆撃機や空母などを展開するほか、韓国軍も北朝鮮に対する大型拡声機による軍事宣伝放送の運用時間の拡大など追加的な対抗措置を講じる方針だ。(ソウル=東岡徹

■北朝鮮をめぐる主な動き

1993年5月 中距離弾道ミサイル「ノドン」を日本海に向け発射

 94年6月 国際原子力機関(IAEA)の脱退を表明

   7月 金日成主席が死去

 98年8月 長距離弾道ミサイル「テポドン1」を発射。一部が日本を越えて太平洋に落下

2002年9月 小泉純一郎首相が訪朝。翌10月に拉致被害者5人が帰国

 03年1月 核不拡散条約(NPT)の脱退を宣言

 04年5月 小泉首相が再訪朝。拉致被害者の子5人が帰国

 05年2月 核兵器保有を宣言

   9月 北朝鮮が6者協議で核兵器と核計画の放棄やNPT復帰などを約束

 06年7月 「テポドン2」など計7発のミサイルを日本海に向けて発射。日本は貨客船「万景峰号」の入港禁止などの独自制裁発動

   10月 最初の地下核実験

 08年10月 米国が北朝鮮のテロ支援国家指定解除

 09年4月 「テポドン2」の改良型とみられるミサイルを日本海に向けて発射

   5月 2度目の地下核実験

 10年11月 韓国・大延坪島を砲撃

 11年12月 金正日総書記が死去

 12年4月 「テポドン2」の改良型とみられるミサイルを南方に向けて発射、空中爆発

   12月 「テポドン2」の改良型とみられるミサイルを南方に向けて発射。「衛星の軌道投入に成功」と発表

 13年2月 3度目の地下核実験

 14年3月 日本海に向けて「ノドン」2発を発射

   5月 ストックホルムでの日朝協議で「北朝鮮が拉致問題の再調査開始」で合意

   7月 安倍政権が独自制裁の一部解除方針を発表

 16年1月 4度目の核実験。「水爆実験に初めて成功」と発表