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■JAIA主催輸入車試乗会インプレッション(上)

 日本自動車輸入組合(JAIA)主催のメディア向け輸入車試乗会が2月初旬、神奈川県大磯町であった。スーパーカーから電気自動車(EV)、商用バンまで注目の10台について、朝日新聞デジタル編集部記者の「独断と偏見」による比較形式で報告する。第1弾のテーマは「エコ性能と安全性能は、走る喜びを生かすか殺すか?」。ここ最近の自動車ファンを悩ませ続ける、この古くて新しい命題の答えやいかに。

■1400万円の価値があるのは? 「テスラ・モデルS P85D バージョン7.1」vs.「メルセデス・ベンツG550」

 見る者を圧倒する社会的・金銭的ステータス、いざというときの衝突安全性能、快適性、時代をリードするハイテクの先進性と希少性……。高いおカネを払ってでも所有したくなる高級車に求める価値は、人それぞれかもしれない。夜の六本木もオフロードも悠々と走破するメルセデスGクラス。このクルマが体現するのが旧来の高級車の価値観ならば、それに対抗する新しい価値観を備えたクルマの代表が、高級セダンとして胸を張って乗れる、おそらく初めてのEVであるテスラ・モデルS P85Dだろう。

 テスラ・モデルSの運転感覚は、まるで自ら実車大のラジコンに乗って操縦しているかのよう。アクセルを踏めば踏んだだけ、電気信号によってモーターの回転数が上がって加速するという極めてシンプルな操作体系。クラッチをうまくつないだり、アクセルをあおったりする高度な運転技術は不要だ。遮音材が良いからか、モーター音すら感じない快適な室内には、風切り音や砂利がはねる音しか聞こえない。エンジンの振動とも無縁だ。

 象徴的なのは、センターコンソールに位置する巨大なディスプレー。パッと見ではiPadそっくりなインターフェースで、グーグルマップを利用したナビゲーションやサンルーフの開け閉めから車高の上げ下げ、デフォルトだとタッチが若干不自然な感がある回生ブレーキの強弱など、すべての操作をタッチパネルでまかなえる。

 車体全体の制御プログラムは更新ソフトウェアの配信によってアップデートされ、前走車を追尾する自動運転などの新機能が、まるでPCやスマートフォンのように追加される。「バージョン7.1」という車名も相まって、もはやクルマというより情報家電に近い。

 今は高級車として売られているものの、それは大容量バッテリーなど高額な部品のコスト吸収のための販売戦略だろう。こうした部品が小型化し、安く調達できれば、この安楽で快適な移動手段が大衆車として世界中を席巻しかねない。そのころにはもしかしたら、名だたる自動車メーカーを押しのけて、今は一介のベンチャーである「テスラモーターズ」が業界の盟主になっているかもしれない。

 かたや、1979年から基本構成が変わらない、堅牢なラダーフレームや平面ガラス、ヒンジむき出しのドアパネルなどが軍用車としての成り立ちを想起させるGクラス。ドアの開閉は重く、室内は意外に狭い。日常の運転にはまったく不要な過剰さとストイックさこそが、男らしさを演出する道具としての価値なのだろう。ただ、意外に小回りが利いて取り回しが良いなど、いくら豪華になっても実用車としての使い勝手は損なっていないあたりがメルセデスらしい。

■腐ってもフォルクスワーゲン 「ゴルフGTI」vs.「ゴルフGTE」

 ディーゼルエンジンの排ガス規制逃れ問題に揺れるフォルクスワーゲン(VW)。スキャンダルからは一番縁遠そうな、質実剛健な車作りが評価されていただけにショックは大きい。

 もとより日本国内では、ガソリンの価格水準が欧州に比べて低いこともあり、ディーゼルの投入を見送ってきたVW。その代わりに昨年に導入したのが、正規輸入としては久しぶりのマニュアルトランスミッション(MT)モデルと、同ブランド初のプラグインハイブリッド(PHV)モデルだ。

 気になるのがゴルフの車体の大きさ。モデルチェンジのたびに肥大化し、弟分のポロがちょうど初代ゴルフに近いサイズだ。GTIは確かにデキの良いマニュアル車なのだが、せわしなくシフトチェンジしながら振り回すほどの軽快感は乏しい。

 むしろ、大型バッテリーによる車両の重量増を安定感の向上と割り切って、モーターアシストを加速力アップに振ったGTEのほうに潔さを感じる。外部電源から充電することで、短距離通勤の繰り返しなら給油が不要なエコ性能。それでいて、燃費は二の次でエンジンとモーターをフル動員するスポーツ走行モードは痛快だ。輸入車初の日本カー・オブ・ザ・イヤーを受賞した素性の良さはそのまま。先行する国産PHVに比べて割高なのが難点だが、元々マジメなクルマ作りをするブランドの本領発揮を見た気がした。(北林慎也)