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 ギリシャ東部エーゲ海で難民や移民を乗せた密航船が転覆し、幼子を含む犠牲者が急増している。例年なら冬の悪天候から密航が途絶えるが、安住の地を目指す人の流れに拍車がかかる。シリアで戦闘が激しさを増し、受け入れ側の欧州連合(EU)で門戸を閉ざされるのではないかとの懸念が高まっているからだ。

 盛り土に「不明」と書かれた墓標代わりの白い石板が並ぶ。ギリシャ東部レスボス島のオリーブ畑の一角に設けられた仮設の墓地。島東岸のミティリニにある墓地が手狭になり、市が私有地を借り管理することにした。

 ここに埋葬されているのは約60人、約8キロ離れたトルコ沿岸から密航船でエーゲ海を渡ろうとして亡くなった人々。大半がイスラム教徒。1月末、数日前に流れ着いた6歳前後の少女も葬られると聞いた。

 「幼い子どもや家族連れが多い。遺体の損傷はひどい。この島でこの仕事ができるのは私しかいない」

 埋葬の手伝いをするエジプト出身のムスタファ・ダワさん(29)は言う。相次ぐ難民らの悲報を知り、通訳の職を辞して1年前、レスボス島に移住。スンニ派の権威、カイロのアズハル大学で身につけた宗教知識を生かし、イスラムの教えに基づいた方法で埋葬しているという。

 国際移住機関(IOM)によると、今年1月にエーゲ海を渡りギリシャに上陸したのは約6万2千人。昨年同月と比べ42倍に急増している。また、海でおぼれるなどした死者は約1カ月で284人を数える。わずか1カ月間で昨年1年間の死者数805人の3分の1を超えた。60人以上が18歳未満で多くが幼児や赤ちゃん。すでに欧州に渡った家族や親族に呼び寄せられたケースが増えているからだとみられる。

 1月29日、夜が明けたばかりのレスボス島ミティリニの海岸にゴムボートが着いた。シリアでは昨秋のロシアの空爆開始後、戦闘が激化。シリア北部アレッポから妻子と逃げて来たというサーミル・ムスタファさん(43)は「海で溺れ死にする危険があるのはわかっていたが、空爆で死ぬよりはましだ」と話した。

 この翌日、トルコからレスボス島へ向かっていた船が転覆。子ども5人を含む39人が死亡。今月8日にも同じようなルートで密航を試みた船が沈没し、少なくとも子ども11人を含む24人が亡くなった。

 レスボスのスピロス・ガリノス市長(63)は「EUがトルコでの難民登録を認めれば、密航はなくなる。人命が失われる事態を早急に解決すべきだ」と語った。(ギリシャ・レスボス島=山尾有紀恵)

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