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 岩手県大槌町吉里吉里の竹沢得彦さん(82)、ヒメさん(78)夫妻宅は、得彦さんが作り続ける手芸品であふれている。

 東日本大震災で、障害者の就労支援施設で働いていた長男の康彦さん(当時49)は帰宅するバスごと津波に流された。その後の火災であごの骨しか見つからなかった。

 康彦さんは細かい作業が好きで、家でも手芸を楽しんでいた。ふさぎこむ得彦さんを見かねた三女の黒沢昌子さん(48)が、手芸品を買って帰り「同じものを作ってみては」と勧めた。

 「作っている間は無心になれる」。得彦さんは元漁師で網の修理をしていたので手先は動く。貝で作ったチョウ。木目込みの人形……。いつしか作品が天井や棚を埋め尽くすほどになった。「康彦はずっと3歳の子の心のままだった。これを見て喜んでいると思う」

 ただ、作っても作っても、心は癒えない。11日は震災から4年11カ月の月命日。今も夫妻は康彦さんに「おはよう」「おやすみ」と声をかけ、食卓にはヒメさんが作った康彦さんの好物を並べる。「まだ、そこにいる気がして」(東野真和