【動画】新企画「世論島」対談 清水ミチコさん×天久聖一さん=竹谷俊之撮影
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 漫画家で映像作家の天久聖一さんが企画したアンケート連載「世論島」が、新たに朝日新聞デジタルで始まりました。次回の質問テーマ「ものまね」にちなみ、100を超えるものまねレパートリーを持つタレントの清水ミチコさんと天久さんが対談しました。

 ――「世論島」は読者参加型のアンケート企画。「どうでもいいけどちょっと気になる」疑問への回答を募集し、その結果を紹介しています。第2回のテーマは「ものまねのレパートリーはいくつが妥当か?」です。

 天久 読者の方に持ちネタの数や得意なものまねを聞いて、ランキングがつくれないかな、と思ってます。

 清水 なるほど、面白いね。そういうランキングって、ありそうでないかも。

 天久 普通の人って、ものまねをいくつぐらい持っていると思いますか。

 清水 こんなの人前でやっていいのかなって、思っている人も多そう。うーん、3、4個ぐらいかなあ。

 天久 多いですね。僕は本当にものまねが苦手で……。本当はたしなみとして3個ぐらい持っていたいんですけど、(「ゲゲゲの鬼太郎」の)目玉おやじぐらいしかできない。

 清水 ベタだね(笑)。私の高校時代、男子はみんなビートたけしさんのしゃべりをまねしてたよ。

 天久 男性誰しもできるような、たけしさんですらできないんです。松井秀喜さんのものまねで「ハイ!」ってひとこと言うだけのやつ、ありますよね。あれも、妻ができるのに僕にはできない。ショックですよ。ものまねするうえで、心構えやコツってあるんでしょうか。

 清水 ものまねがうまい人って、自分を強く持っていない人が多いんです。自分はこうしたいっていう意識が希薄で、誰かになりたいという欲望が強い。天久さんの場合、お仕事的にも本気で誰かになりたい、という風にはならないんじゃないかしら。

 天久 自意識が邪魔するっていうのはありますよね。

 清水 スベったら怖いな、とかね。アンケートだと、誰が上位になるかな。目玉おやじとか、森進一さんとか、世代によっても分かれそう。若い子だと、やっぱり(「妖怪ウォッチ」の)ジバニャンとか?

 天久 アニメ系は多そうですね。

 清水 結果が楽しみだね。

 ――清水さんといえば、桃井かおりさんや松任谷由実さんのものまねが有名ですが、一番最初にものまねしたのは誰ですか。

 清水 天地真理さん、桜田淳子さん、吉田拓郎さんあたりですかね。歌詞を書き写したりもしてました。それから、私のなかで深く感動したのは、やっぱりユーミンさん、矢野顕子さん、桃井さん。この3人は一生やってくんじゃないかな。ものまねのプロの人も、大体10代で感動した人をずっと持っていく気がしますね。

 天久 桃井さんの状態で、どれぐらい長くいられますか?

 清水 1時間やれって言われたら全然できるし、ヘタしたら一生、桃井さんでいられるかもしれない。でも壇蜜さんとか最近のレパートリーだと、長くても1分ぐらい。英会話と一緒で、日常会話から始まって、だんだんとできるようになっていく。ものまねが語学に似てるっていうか、語学がものまねに似ているのかも。

 天久 潜水にも似てますね。桃井さんなら50メートル息継ぎなしで泳げる、みたいな。

 清水 そうそう、遠泳できちゃう。

 ――ものまねには、愛情やリスペクトに加えて、ちょっぴりの悪意や批評性が含まれることもあると思います。清水さんの場合、愛情と悪意の比率はどの程度なのでしょうか。

 清水 人によりけりかなあ。8:2だったり、2:8だったり。見る側に対してのサービスとして、バカバカしくしたり、多少の皮肉を入れたりしていきますね。

 天久 ものまねする人がご本人をどう解釈するかが大事で、そこが面白い。お客さんとの共犯関係みたいなところもあるんでしょうか。

 清水 そうだね。ライブなんかで秘密を共有するというか。私の場合、ご本人の前で派手にやるのはそんなに好きじゃなくて。やっぱり、ちょっと良心の呵責(かしゃく)があるぐらいがいいのかもしれません。

 天久 とはいえ、悪意だけだったら、ものまねできないですよね。

 清水 ウケようと思って悪意を丸出しにしても、今の人たちは引いちゃいますから。それと、よく「矢野顕子さんを笑いの方向に持っていくべきだ」とも言われるんですけど、どうしてもできないんだよね。好きすぎて。比率で言ったら10:0。何なら「笑うな!」って感じになっちゃう(笑)。ところで、天久さんのご出身は?

 天久 香川県です。

 清水 この間、吉本の芸人さんに聞いたんだけど、歴史的にものまね文化って関西にはなかったらしいんですね。

 天久 えっ、そうなんですか。

 清水 言われてみると、関東でしか見ないかも。個人攻撃みたいに見えるから好まれないのかしら。

 ――清水さんは全国でライブをされていますが、反応が違ったりするものですか。

 清水 いや、大阪なんかめっちゃ反応いいですよ。都会だからかな。田舎の方に行くと、辛口のネタは引かれちゃう傾向にありますね。清水ミチコってこんな人だったんだ……みたいな。

 天久 わかります。僕も田舎出身ですが、すごく素朴なんですよね。先生のものまねも本人が笑ってくれるレベルで抑えないと、それ以上のことをやった途端に異端視されます。あいつは悪魔の子だって。

 清水さんに伺いたいのは、ものまね界の歴史について。タモリさんやコロッケさんのようなエポックな人がいて、その都度シーンがガラッと変わってきたわけですよね。

 清水 やっぱり、タモリさんの路線はすごい憧れです。そんなに、ものまねを押さないじゃないですか。でもやってみると、思想ものまねとかすごくディープで。その人が言いそうなことを見つけ出す喜びっていうのは、非常に影響されてますね。あとは関根勤さんも。

 天久 僕は高校生の時がものまね四天王ブームで、「もしもシリーズ」が好きでした。

 清水 「もしも細川たかしが救急車のサイレンだったら」とかね。栗田貫一さんのネタ。大スターがこんなことになってるっていう、ギャップが面白いんですかね。細川さんを救急車に見立てちゃうというアイデア。

 天久 シュールな感じも入っていて。

 清水 モナリザのパロディーがずっと消えないように、ものまねには神聖な人や偉い人を引きずり下ろすカタルシスがあるのかもしれません。

 天久 ものまねの若手の人たちは、女性が多いですね。

 清水 みんなうまいですよね。お笑いの世界は男が強いけど、ものまねは結構、女の人の方がいけるんじゃないかな。着眼点の意地が悪い(笑)。

 天久 女性がする女性のものまねって、確かに悪意を感じますね(笑)。

 清水 友近さんとか最高だよね。

 ――ものまねする対象の神聖さが前提にあるとすると、大スターがたくさんいた昔と現代とでは、やはり勝手が違うのでしょうか。

清水 そうなんです。隣にいるようなアイドルが増えてきて、ウチらの業界お手上げですよ。ユーミンさん、森進一さんみたいに誰もが知っている人がいた時代は、その人をまねすればみんな共感できた。でもいまは細分化されてますからね。そういう意味では、紅白歌合戦が最大公約数なのかな。あとは、芸能界的にあの人はやめておいた方が……ということもあるだろうし。視聴者の人もすごく敏感なのよね。

 天久 いまはそういう時代ですよね。一般の人が警察みたいに「あれはダメ」「これはダメ」って言ってくる。パロディーをやっている人間としても、すごくやりづらいです。

 ――清水さんは緊張した時、「平常心の自分」のものまねをすることがあるそうですね。

 清水 そうそう。それはすごく大事。本番前に、うわー怖い!って思うじゃん。そういう時に、平常心のものまねをすると、普通にステージに立てるの。

 天久 すごいですね! メンタルトレーニングだ。

 清水 ぜったい必要ですよ。一般の人でも冠婚葬祭で急にスピーチしなきゃいけない、ブルーな時があるでしょ。そういう時に生かせると思いますよ。

 天久 スティーブ・ジョブズのプレゼンをまねする手もありますね。

 清水 アメリカ人の自信満々のあの感じね。誰かにものまねしてほしい(笑)。

 ――清水さんがいま挑戦中のものまねはありますか。

 清水 開発中じゃないんだけど、天久さんにお願いしたいことがあって。ライブ用に、すごくバカバカしい70年代アイドルの新曲PVをつくってほしいの。天久さん、そういうのものすごくセンスありそう。

 天久 いいですね。清水さんには、「松尾スズキの『うっとりラジオショー』」(NHK―FM、天久さんが構成)に出演していただいた時にも色々やっていただきましたけど。

 清水 ああいう昭和初期みたいな世界もいいね。それじゃ、70年代か昭和初期の感じでお願いします!

 天久 僕もやってみたいものがあるんです。ものまねで「ご本人登場」ってあるじゃないですか。

 清水 ものまねしてた人が「ハッ!」てビックリしてね。

 天久 そのご本人の後から「超ご本人」が出てくるんですよ。

 清水 超ってなんだよ!(笑)

 天久 コロッケさんの後から美川憲一さんが出てきて、その後から超・美川憲一が出てきて……。

 清水 アハハ。ぜひやりたい。

 天久 どんどん、神みたいに抽象的で人間を超越した存在になっていく。最後は、なんかつるんとしたものが出てくるっていう(笑)。

 清水 超ご本人っていい言葉だね。さすが天才!(聞き手・神庭亮介

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 清水ミチコ(しみず・みちこ) ラジオ番組の構成作家などを経てタレントに。CD「趣味の演芸」、DVD「私という他人」、著書「主婦と演芸」(幻冬舎)など。「清水ミチコ一人フェス 2016」の追加公演が20日に京都の京都劇場、21日に静岡のアクトシティ浜松で開催予定。

 天久聖一(あまひさ・まさかず) 1989年、マンガ家としてデビュー。演劇脚本・小説執筆・映像制作など多方面で活躍。単著に「ノベライズ・テレビジョン」「少し不思議。」、共著に「バカドリル」など。2014年~15年には、朝日新聞デジタルで「家庭遺産」を連載。

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