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 環境を傷めず、働く人の人権を守り、多国籍企業から途上国の零細農家までがともに潤い、息長く共存できるしくみづくりとは。東京都内で10日開かれた国際シンポジウムでは、企業やNGOの取り組みをもとに、国内外の専門家が課題や解決策を話し合った。

 「(先進国との間で)過度な不平等が起こり、途上国側に貧しいステークホルダー(利害関係者)や環境破壊を生んだ」

 シンポジウム「持続可能なサプライチェーンと倫理的貿易」では、基調講演に続いて報告に立ったロンドン大学アジア・アフリカ研究学院のマチコ・ニサンケ名誉教授がこう指摘した。

 グローバル化が進み、モノをつくり、消費者に届けるネットワークである「サプライチェーン」は、世界中に広がる。しかし、先進国の企業が主導するのでは、途上国の生産者らに十分に恩恵が及んでいないとし、「現地の農協を組み込むなどして、生産者がより戦略的に参加できるようにするべきだ」と提案した。

 国際NGO「ソリダリダード」のシャタドル・チャトパダヤイ南・南東アジア代表は、「インドでは12時間に農家1人が自殺している」というデータを紹介した。新しい栽培技術を学ぶ機会なども限られる。生産者が生きていくのに十分な収入が得られない途上国での農業をめぐる現状を指摘した。

 企業からは、「売り手よし、買い手よし、世間よし」の「三方よし」を掲げる伊藤忠商事の小野博也CSR・地球環境室長が登壇した。伊藤忠は、インド中西部で、遺伝子を組み換えていない綿花の苗を農家に無償で提供し、有機農法も教えている。安全に栽培した価値の高い綿花を売り、農家の収入も増える効果をめざすもので、「農家の収入が安定し、彼らはそれを住宅の改善に使っている。農薬を減らすことで、めまい、せき、頭痛などの健康障害もよくなった」と報告した。

 その後の討論では、企業やNGO、政府など幅広い部門が連携し、共存のしくみをつくっていくことが重要との指摘が相次いだ。東京経済大の渡辺龍也教授は「英国やノルウェーでは、企業とNGOがサプライチェーンを改善するために協力する動きがある。そういう意味では(日本は)遅れている」と語った。

 日本の果たす役割では、環境関連などの先進技術や倫理観に期待する声が出た。チャトパダヤイ氏は「日本は技術移転で貢献できる。日本の持つロボット技術は、農業での持続可能性につながっていく」と話した。アジア経済研究所の中村まり研究員は「日本には労働者の教育で生産性をのばす伝統がある。従業員を大切にする考え方を世界に広げていくべきだ」と述べた。

 シンポジウムは、日本貿易振興機構(ジェトロ)アジア経済研究所、世界銀行、朝日新聞社が共同で開催した。

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