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 北朝鮮は11日夕方、韓国が南北協力事業である開城(ケソン)工業団地の操業を全面中断したことを受け、「同団地を閉鎖し、軍事統制区域とする」と宣言した。韓国側関係者は同団地から全員が撤収した。南北の公式な対話チャンネルは全て途絶し、朝鮮半島情勢は混迷を更に深めることになった。

 朝鮮中央通信によると、北朝鮮の祖国平和統一委員会は11日に声明を発表。韓国による操業中断は、「米国に唆された朴槿恵(パククネ)(韓国大統領)の売国気質、対決ヒステリーの産物だ」と非難。11日午前10時から同団地に隣接した軍事境界線を全面封鎖するとも宣言した。

 また、韓国の入居企業124社の全資産を凍結し、開城市人民委員会の管理下に置くとして、事実上没収する考えを示した。南北間の軍事通信と境界線上にある板門店の連絡通信網も閉鎖するとした。

 北朝鮮は韓国人全員の「追放」も宣言した。韓国統一省によると、11日午後11時過ぎまでに、軍事境界線近くの北朝鮮側にある同団地から、残っていた韓国の入居企業や政府の280人全員が韓国側に戻った。同夜、同団地と韓国を結ぶ通信も打ち切られた。

 団地で靴製造業を経営していた男性は記者団に「荷物の30分の1も持ち出せなかった。言葉もない。政府が事前に(事業中断を)教えてくれれば、もう少し持ち出せたのに」と、声を絞り出すように語った。

 北朝鮮は今回、同団地を軍事統制区域とした。2013年に事業が一時中断した際にこうした宣言はなく、今後は軍事的な拠点として衣替えを図る可能性がある。軍事関係筋によれば11日現在、北朝鮮軍の動きに特別な変化はないという。

 北朝鮮の朝鮮中央テレビは11日、金正恩(キムジョンウン)第1書記が専用機で平安北道東倉里(ピョンアンブクトトンチャンリ)にあるミサイル発射場を視察した記録映画を放映。打ち上げの場面とする映像も複数の角度から放映した。朝鮮労働党機関紙、労働新聞(電子版)は同日、「世界平和と安全破壊の主犯も、軍備競争をもたらす張本人も米国だ」とし、米国を強く非難した。

■ミサイルの残骸、韓国が追加公開

 一方、韓国国防省は11日、水深約80メートルの海底に沈んでいた北朝鮮の長距離弾道ミサイルの残骸を追加で公開した。機体の1段目と2段目の連結部、他はガス噴射口などとみられる。

 また、韓国外交省によれば、尹炳世(ユンビョンセ)外相はニューヨークで潘基文(パンギムン)事務総長や安保理メンバーと相次ぎ会談。国連安全保障理事諸国に対し、北朝鮮に強力な制裁を科すよう協力を働きかけた。尹外相は近く、ドイツ・ミュンヘンで米中ロの各外相と相次ぎ会談する。(ソウル=牧野愛博)