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 核実験の強行、事実上の長距離弾道ミサイルの発射に続いて、北朝鮮が12日夜、拉致被害者ら日本人に関する包括的な調査を中止すると発表した。日本政府が北朝鮮への独自の制裁措置を決めたことへの対抗措置だ。被害者の家族たちはおおむね冷静に受け止めるが、日本政府に求める姿勢には違いもある。在日コリアンからは緊迫する情勢への不安の声が漏れた。

 ストックホルムでの政府間協議で、日朝が拉致被害者らの再調査に合意したのは2014年5月。北朝鮮は同年7月、特別調査委員会を立ち上げ、調査を開始した。

 拉致被害者の横田めぐみさんの母、早紀江さん(80)は「再調査が始まって1年半以上も報告もなく、いい加減なことばかりやっている国。私たち家族はずっと怒り続けているのに、やられっぱなしで、何とも言いようがない」と無力感をあらわにした。日本政府に対して「いろいろな形で強く言ってほしい。家族は祈りながら、待っているだけです」と話した。

 一方、拉致被害者の蓮池薫さんの兄、透さん(61)は「日本として『対話の扉は閉ざさない』というのなら、ストックホルム合意のときに日本側が解除した独自制裁を、いま復活させるべきではなかった」と残念がる。「日朝が改めて合意して交渉が再開するのにまた3~4年はかかるかもしれないと思うと、気が遠くなる」と語った。

 再調査が始まってからも具体的な進展は見られないままだった。

 特定失踪者問題調査会の荒木和博代表は「北朝鮮側の動きはなく、調査はとっくに事実上の中止に追い込まれている。北朝鮮側は日本政府が困ると思っているのだろうが、日本側は動揺せずに独自制裁を続け、国際的圧力を強めていくことが重要だ。そのうち、向こう側が動きを見せるだろう」との見方を示した。

 在日コリアンで、南北統一を願うイベントを手がける鄭甲寿(チョンカプス)さんは「各国の制裁への反発として予想はできた行動だ。北朝鮮の強硬な対応により、アジアは非常に不安定な状況になってしまうだろう。国内では朝鮮学校への風当たりが強くなることが心配だ」と言った。

 一方、日本政府の独自制裁決定に対して、在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)の南昇祐(ナムスンウ)副議長は12日午後に記者会見し、「在日同胞の生活を不当に規制、抑圧する許し難い暴挙」と述べ、撤回を求めていた。ストックホルム合意にも触れ、「今回の措置で日本側が合意を一方的に破棄した」と主張していた。

 菅義偉官房長官は同日の会見で朝鮮総連の抗議に対し「ストックホルム合意を破棄する考えはない。拉致問題を解決するために対話を継続したい」と述べた。

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