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 東京電力福島第一原発事故で避難を強いられた人々が避難先で、新居を構える動きが加速している。事故から5年がたとうとし、安心して暮らしたい人が増えている。だが、ふるさとへの思いや、自治体からの助成を受けられなくなる都合などで、住民票を残したままの人も多い。復興計画に影響する可能性もある。

 今年の正月、元農家宮本明さん(65)は福島県いわき市内に新しく購入した自宅で5年ぶりに息子夫婦や孫とおせち料理を囲んだ。

 福島第一原発がある大熊町の海のそばにあった自宅は津波で木造2階建ての1階部分が浸水。さらに原発事故による放射能汚染で一帯は「帰還困難区域」に指定され、帰還のめどはたっていない。宮本さんはいわき市、息子の家族は茨城県内と、ばらばらに避難生活を送ってきた。

 「せめてお盆や正月くらい、みんなが集まれる家がほしい」。2015年春、新聞の折り込み広告に載った市内の建売住宅を見に行き、即決した。土地付き木造2階建ての4LDKで2800万円。東京電力から支払われた賠償金と貯金を合わせれば、手が届く値段だった。

 昨年6月に入居すると、近所には同じ境遇の人がたくさんいた。「放射能があるふるさとに戻れるとは思えない。孫を被曝(ひばく)させられない。今安心して生きられる家を求めるのは、自然なことだと思う」。宮本さんは少し寂しそうに笑った。

 大熊町の元農家松本光清さん(67)は事故後、以前から栃木県鹿沼市に住んでいた息子の6畳2間のアパートに身を寄せ、後に近くの借家に移った。

 90代の母の「仮の家で死にたくない」という言葉を機に、市内に築30年の2階建て中古住宅を借金して買った。その後、東電からの農業ができないことへの賠償金で返済した。

 孫は中学2年と小学2年だ。2人とも、大熊町での暮らしや友達との思い出はほとんどない。「鹿沼での暮らしに慣れたし、孫の友達もみんなこっちの子どもたち。元の町には戻れない」

 原発事故で避難している人は避難先に家を購入しても、住民票をふるさとに置いたままにすることが多い。

 福島県郡山市に自宅を建てた60代男性は事故前に住んでいた大熊町から住民票を移していない。「先祖代々受け継いだふるさとを完全に捨てたくはない。住民票だけでも元の町に置いておきたい」と話す。茨城県日立市で家を買った30代男性も「町の情報誌が届かなくなる。完全に関係が切れてしまうのは寂しい」。

 総務省は「避難継続中であれば…

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