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 全国約700の災害拠点病院のうち、被災時に医療を継続するためのマニュアルを策定しているのは昨年春時点で約3割にとどまることが、朝日新聞の調べでわかった。病院が被災し、停電や薬の不足で患者が亡くなった東日本大震災の教訓をもとに、厚生労働省が整備を求めている。「策定の仕方が難しい」といった声もあり、厚労省は新年度以降、具体例を示すなどして整備や普及を促す。

 被災時に医療を中断させないための準備や行動計画をまとめたもので、企業などで使われる「BCP(事業継続計画)」の考え方に基づく。災害を想定し、弱点を事前に補うとともに、外部との協力が必要になってくる。例えば、自家発電の燃料や薬を優先的に供給してもらうための取り決めなど対外的な調整▽衛星電話など通信手段の確保▽医療スタッフが不足した場合の応援要請や受け入れ体制の整備などが求められる。

 厚労省は2012年と13年、都道府県を通じて災害拠点病院へのBCPマニュアルの整備を要請。朝日新聞が各都道府県に確認すると、15年4月時点での策定済みは、全国695の災害拠点病院のうち228病院(33%)。東京(83%)や岩手(82%)、石川(80%)など7都県で5割を超えた。首都直下地震に備える東京は、12年に独自の策定指針をつくるなどして、策定率が大幅に上昇。南海トラフ地震が予想される高知県では、ノウハウを持つ企業が支援する仕組みを整備した。

 一方で、長野、和歌山、岡山では策定済みの病院がまだなかった。都道府県の担当者からは「国が具体例を示して欲しい」「忙しくて手が回らないようだ」などの声が寄せられた。

 ほとんどの病院にある阪神大震災を教訓に作られた災害対応マニュアルは、発生直後の救命救助など初動対応に重点が置かれ、病院の被害を具体的に想定しているケースは多くない。東日本大震災では、停電による人工呼吸器の停止や点滴薬・輸液の不足などで入院患者の容体が悪化するケースが相次いだ。通常の診療体制なら救命できた死亡者も多数いるとみられている。

 本間正人・鳥取大教授(救急・災害医学)は「病院のBCPは発展途上とはいえ、7割で策定していないというのは多すぎる印象。例えば内陸には津波はこないから『自分のところは必要ない』と考えている病院があるのではないか。洪水や集中豪雨などあらゆる災害を想定する必要がある」と指摘する。(田内康介)