【動画】腰痛対策「これだけ体操」 松平浩さんの実演解説=田村建二撮影
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 国民病ともいわれる腰痛。原因はさまざまだが、はっきりしない慢性腰痛もある。かつては、安静にするのがよいとされたが、体を動かし、筋力をつけることが、痛みの軽減や再発予防に効果的なことがわかってきた。

 千葉県に住む女性(76)は、60歳の時に突然、腰痛に襲われた。トイレに行くのがやっとで、1カ月間は安静にしていた。それ以来、時々、腰痛が出て、散歩やストレッチを心がけていた。

 2年前、散歩の途中で、鉄棒につかまり、つま先立ちになってわきの下を伸ばした。地面にかかとを下ろした時に違和感を覚え、翌日、背中全体が痛くなり、3日目には激痛で動けなくなった。「世界中の痛みをしょったのかと思った」

 近くの診療所で痛み止めの薬を処方されたが、改善しない。1カ月後、別の病院を受診、MRI検査で、骨がスカスカになって弱くなる「骨粗鬆症(こつそしょうしょう)」による骨折といわれ、骨の形成を助ける薬を処方された。

 痛みは半年たっても続いた。そこで別の病院で骨にセメントを注入する手術を受けた。「痛みが劇的に消えて夢かと思った」

 今も疲れると痛みがでる。毎日、病院で教わったストレッチと筋トレを欠かさない。「体操すると気分がよくなるし、動かないと動けなくなると思って続けます」

■原因様々、骨折予防を

 高齢者に多い腰痛の原因が骨粗鬆症による骨折だ。骨がもろくなってひびが入ったり、変形してつぶれたりする。俗に「圧迫骨折」と呼ばれる。

 北里大北里研究所病院(東京都)整形外科脊椎(せきつい)センターの辻崇センター長によれば、突然、激痛に襲われることもあれば、次第に痛くなることもある。経過とともに痛みがよくなることはまずない。X線検査で、骨のひびがわからないこともあるという。

 治療では、コルセットやギプスをつけて固定し、骨の形成を助ける薬を使う。良くならない場合は少量のセメント注入で骨を補強する手術などを検討する。骨は変形したまま固まり、前かがみの姿勢になりがちだ。変形が強いと、バランスを取りづらくなり、杖や押し車が必要になる人もいる。

 辻さんは「骨折になる前の対応が大切」と指摘する。特に閉経後の女性は骨を維持するため、カルシウム摂取や日光浴、運動を心がける。定期的に骨密度を測り、骨粗鬆症の疑いがあれば専門医を受診する。

 福島県立医科大会津医療センターの白土修教授(整形外科)によると、加齢に伴い脊髄(せきずい)を囲む背骨の関節や椎間板(ついかんばん)が変形して起きる「脊柱(せきちゅう)管狭窄(きょうさく)症」も、腰痛の原因になる。変形が強くなり、神経が圧迫され血流が悪くなる。足にしびれが出るのが特徴だ。

 治療では、腰への負担を減らすコルセットを着用して痛み止めや血流をよくする薬を使う。痛みで生活に支障が出る場合は、骨を削ったり固定したりして、神経の圧迫を和らげる手術を検討する。

 腰痛は、骨への細菌感染やがんで起こることもあり、ただちに治療する必要がある。体重が減ったり微熱が続いたりする場合は要注意。「病院に行きたがらない高齢者もいるが、原因の見極めが大切。危険信号を見逃さないように受診してほしい」と白土さん。

■無理なく続けて効果

 痛みが3カ月以上続く慢性腰痛は原因がはっきりしないことが多い。日本整形外科学会と日本腰痛学会が2012年にまとめた診療指針では、慢性腰痛には薬物と運動療法を推奨する。ただ、痛み止めの非ステロイド性消炎鎮痛薬(NSAIDs)は、消化管の出血や腎臓障害の副作用が出る場合があるので、注意して使いたい。

 腰をひっぱる牽引(けんいん)療法は、指針では腰痛全般に対して「有効であるエビデンス(証拠)は不足」とされた。電気神経刺激療法については「有効か無効かは一定の結論に至ってない」とした。

 運動療法は筋肉を強化して腰への負担を減らす。継続することで慢性的な痛みを和らげ、再発予防にも効果がある。

 東京大医学部付属病院22世紀医療センターの松平浩特任准教授(整形外科)は、「安静第一と思い込んでいる人は考えを変えよう」と訴えている。不安から腰を動かさないでいると、むしろ腰痛が治りにくくなってしまうという。

 背骨と背骨に挟まれた椎間板(ついかんばん)の中央には、ゼリー状の髄核がある。前かがみの状態が続くと、髄核が後ろに移動する。これを松平さんは「借金がある状態」と呼ぶ。「借金」を重ねると、椎間板が傷ついたり、椎間板から髄核が飛び出すヘルニアになったりする可能性がある。そのため、後ろにずれた髄核を定期的に元に戻してやる必要があるという。

 松平さんが提唱するのが、立った状態で、息を吐きながら、腰を3秒間後ろにそらす「これだけ体操」だ。1、2回を1日数回やるのが目安だという。

 一方、白土さんは、ふだんから正しい姿勢に気をつけ、毎日の「腰みがき体操」を勧める。「継続が肝心。痛みが強くならない範囲で、無理なく続けましょう」(瀬川茂子)