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 桃の節句を前に、独特な風貌(ふうぼう)のひな人形を作る岐阜市の人形店が全国的に注目を集めている。黒い衣装のゴシックロリータやテディベア。平安朝の宮廷装束からはかけ離れた創作ひな人形の数々には、時代の流行を取り込みながらも伝統を引き継ごうとする人形工芸士の思いがある。

 「ゴスロリ(ゴシックロリータ)は日本のサブカルチャー。現代人のかわいい、かっこいいを表現しようと作った」

 そう話すのは岐阜市大柳町2丁目の人形店「後藤人形」の節句人形工芸士、後藤由香子さん(46)。自由な発想でひな人形を作るきっかけは、来店した若いママたちの浮かない表情だった。娘のために購入しようと見て回る店内の伝統びなに満足していないように見えた。

 「伝統は今の人が楽しんでこそ、次につながる。昔ながらのひな人形では心を打たれない人もいる」

 子どものころから初代の祖父の隣で人形を作り、遊んでいた。大学卒業後、地元放送局アナウンサーを経て、結婚を機に家業を継ごうと19年前に実家に戻った。ひな人形制作は分業で職人約50人が関わる。人形の顔を描く面相師、髪形を整える結髪師、着物の生地を織る西陣織の職人。独学でデザインを習得した後藤さんは、ひな人形の完成予想図を描き、職人に指示書を送る。