[PR]

 2005年に栃木県今市市(現日光市)で小学1年の吉田有希さん(当時7)が下校途中に連れ去られ、茨城県で遺体で見つかった事件で、殺人罪で起訴された無職勝又拓哉被告(33)の裁判員裁判が29日、宇都宮地裁で始まった。検察側、弁護側の冒頭陳述の要旨は次の通り。

     ◇

 【検察側】

 吉田さんは05年12月1日午後2時10分ごろ、同級生3人と一緒に小学校から下校。同日2時38分ごろに今市市木和田島の三差路で同級生たちと別れ、その後行方不明となった。翌2日午後2時ごろ、茨城県内の山林で遺体で発見された。

 事件発生以降、警察は連れ去り現場付近で目撃された不審車両や、自動車ナンバー自動読み取り装置(Nシステム)の記録を調べるなどの捜査をしてきた。多数の捜査対象者の中に被告人も含まれていた。

 さらに被告の行動確認をする過程で、被告やその母に対する商標法違反容疑が発覚。14年1月29日、同容疑で被告らを逮捕し、同2月24、25日には殺人容疑で家宅捜索をするなどの捜査を継続し、被告と犯人を結びつける客観的事実が多数判明した。

 被告は(吉田さんが行方不明になった)12月1日、連れ去り現場から比較的近いレンタルショップにおり、吉田さんを連れ去ることが可能だった。また連れ去り現場近くで目撃された不審車両と同じ白いセダンタイプの車を使用していた。かつて連れ去り現場近くで生活しており、土地勘もあった。

 被告は1日深夜から翌2日の明け方にかけて当時の自宅方面から遺棄現場方面へ往復していた。また被告は事件以前に遺棄現場と同じ方面の茨城県内の寺の骨董(こっとう)市に通っていたことがあり、遺棄現場周辺の土地勘もあった。

 遺体に付着していたネコの毛を鑑定した結果、被告が事件当時に飼っていたネコの毛と矛盾がなく、遺体の傷も当時被告が所持していたスタンガンによってできたものと矛盾がない。

 被告は幼女に対する性的興味のほか、ナイフや残虐行為にも興味があった。母親に対し、事件を起こしたことを謝罪する手紙を殺害を認めた後に書いていた。

 被告は殺害を自白し、詳細な事実を供述した後、14年6月24日に殺人罪で起訴された。その後の公判前整理手続きの中で、被告は自白を翻し、15年5月ごろには拉致やわいせつ行為はしておらず、殺害とは一切無関係であると弁解した。弁解内容は大きく変遷し、信用できない。

 【弁護側】

 勝又さんは無実。犯人ではない。連れ去っていないし、わいせつ行為も殺害も遺棄もしていない。事件に無関係で、うその自白しかしていない。

 自白では立ったまま5回、ひざまずいてから5回刺したとしたが、最初の1回で体勢が崩れるので同じ角度から刺すのは不可能。さらに、殺害後すぐに斜面に投げ捨てたとされるが、大量に残っているはずの血液が残っていない。

 遺体の直腸温度や胃の内容物から死亡推定時刻は1日夕方ごろとされ、2日午前4時ごろとする自白と矛盾する。

 わいせつ行為についても遺体から被告のDNA型が見つかっておらず、わいせつ行為による傷も遺体にはなかった。女児は被告にいきなり拉致され車内やアパートでわいせつ行為をされたにもかかわらず、泣いたり必死に抵抗したりしなかったとする自白はあまりにも不自然だ。

 自白には犯人しか知り得ない秘密の暴露がない。自分で体験していない事実を無理やり話したからであり、それは自白に任意性がなかったためだ。動画やナイフを持っている多くの人がいる中で犯人と結びつけるのは不当であり、客観的事実がないのは勝又さんが犯人ではないからだ。