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★キャンプの素顔・総括編

 1998年、中学1年の夏。所属していた硬式野球のクラブチームで長野県に遠征した。試合の途中から登板した相手投手が、強烈だった。体の線は細いのに、130キロ台は出ていた快速球。なかなかバットに当たらない。当時、中学3年の金子千尋だった。

 20年ぶりのリーグ優勝に向け、命運を握っているのは明らか。沢村賞、ゴールデングラブ賞、ベストナイン、MVPに輝いた2014年オフに右ひじを手術し、ようやくキャッチボールを始められた昨年のキャンプインからは一転、今年は「ブルペンに入ろうと思えば入れる状態」と順調そうなスタートを切った。

 調整は本人に任されている。初めてのブルペンは2月7日。「ぶん投げてるだけ」と言っていたが、フォームを見る限り、力みは全く見られない。でも球は走る。18年前に見た第一印象とは違い、そこに多彩な変化球が交ぜられていた。

 取材での受け答えは、現状を見つめ、自分の言葉で発信しようとしているように感じる。たとえば25日の練習試合で、実戦に初登板したとき。2回を被安打ゼロに抑えたが、「投げるからには、0点に抑えられてよかったのはあります。全部の球が思い通りではないけど、ストライクを取れたし、無難によかった」。

 記事では表現しづらい部分もあるが、何を考えているのか、聞いていて勉強になる。ちなみに「打者を抑えようと思っていたか」と質問すると、「打たれるのは嫌だし、打たれて気付くこともあるけど、そんなに強くは(思って)なかったです」と返ってきた。

 28日の最終日は、ブルペンで50球を投げた。ブルペン捕手に右でも左でも打席に立ってもらって、実戦を想定。いい形でキャンプを締めくくれたのか、どこかに照準を合わせて投げているのか。聞いてみた。「照準は特に合わせてなくて、まだフォームのことが先」。1年間投げ抜くことを最優先に考えているからこその発言だろうと感じた。

 今回の読者プレゼントは「金子千尋投手のサイン入り、キャンプ限定帽子」。本人にサインを書いてもらう際、こう言ってみた。

 「実は中学時代、うちのチームは金子さんと対戦したことがあるんです」

 絶対、記憶にないだろうと思っていた。あのときの中学3年生がすごい投手になったからこちらは覚えている。でも、相手はプロで10年以上のキャリアがある投手だ。覚えているはずはない。

 「覚えてますよ」

 「え?」

 「右ピッチャーの球が速かった。あ、あと女の子がいましたよね?」

 なんと、うちのチームに女子選手がいたことまで覚えていた。一流投手は、記憶力もすごかった。(井上翔太

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