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 福島第一原発事故の発生当初、政府が原子力緊急事態を宣言するのに必要な東京電力からの緊急事態発生の報告が、1時間ほど遅れていた可能性があることを東電が社内調査で確認した。東電の担当者は「混乱のなかで報告しそびれたのかも知れない。当時の対応が適切だったか、詳しく調べたい」としている。

 事故対応の不備をめぐっては、炉心溶融(メルトダウン)の判定基準の存在に5年間気づいていなかったことも先月判明した。事故から5年を経て、東電が的確に対処できていなかった実態が浮き彫りになった。

 電力会社は原発の緊急事態を直ちに政府に知らせるよう法律で義務づけられ、宣言に直結する「15条報告」と、その前段階の「10条通報」がある。宣言の遅れは、住民避難などを指示する原子力災害対策本部の設置の遅れにつながる。

 東電は津波襲来直後の2011年3月11日午後3時42分、1~3号機が「全交流電源喪失」に陥ったと判断し、政府に10条通報した。地震で外部からの送電が途絶え、その後に起動した非常用発電機もすべて止まったためだ。

 このころ1、2号機はバッテリーまで水没し、直流電源も失われていた。原子炉の水位や圧力を監視したり、炉心の冷却装置を制御したりするのに必要な「命綱」の電源。すべて失われると「全交流電源喪失」より厳しい「直流電源喪失(全喪失)」という事態に該当し、15条報告する必要があった。今回の調査で東電は、今から振り返れば津波襲来直後に報告できた可能性があったと認めた。

 実際の15条報告は、その約1時間後の午後4時45分、1、2号機で原子炉水位が監視できないとして行われた。政府へのファクスには「念のため『15条』に該当すると判断しました」と書き込まれていた。

 政府は15条報告を受けた後、手続きに手間取り、緊急事態を宣言したのは午後7時3分だった。

 政府の事故調査・検証委員会委員を務めた吉岡斉九州大教授(科学技術史)は「事業者にとって15条報告は基本中の基本。1時間も遅れたのなら重大だ。当然すぐ出すべきだった。ただ当時は官邸の機能がまひしていたので早く出しても結果は変わらなかったかもしれない」と話している。

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 〈原子力緊急事態〉 原発で緊急事態が起きると首相は直ちに原子力緊急事態を宣言し、住民避難などを指示する原子力災害対策本部を立ち上げると原子力災害対策特別措置法は定める。電力会社は宣言に直結する厳しい事態なら直ちに政府に報告(15条報告)し、その前段階でも直ちに通報(10条通報)するよう義務づけられている。