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★キャンプの素顔・総括編

 「うわっ、はやっ」

 記者席で、思わず立ち上がりそうになった。巨人の重信がオープン戦で盗塁を決めた時だ。ぐんぐん加速する。スライディングも速い。そのスピードは、想像を上回っていた。

 「僕、足には自信があります。よーいどん、で走って誰かに負けたという記憶はないんですよ」。50メートルのタイムは5秒7。中学時代に、国道を走る路線バスと競走して勝ってしまったという逸話も残したほどだ。

 早稲田実高、早大と進み、昨秋のドラフト2位で入団した新人だが、じつは、小さいころは野球選手になりたいと思っていなかったという。「いろんな国に行きたいんで、国際線のパイロットとか商社マンにあこがれていた」。英語が得意で、読書好き。重信の言動からは、野球一筋の熱血漢という雰囲気は感じ取れない。キャンプ中の休日には沖縄のビーチで、1人で本を読んでいた。ドイツの哲学者・ニーチェの「ツァラトゥストラかく語りき」(河出文庫)という小難しそうな本を手にし、「ニーチェの考え方がたくさん書いてあって、勉強になるんですよ」と笑う。

 そんな22歳だが、間違いなく今キャンプで一番目立っていた。

 「足は速いし、打撃もここまでいいとは。おもしろい選手だね」。25日間にわたったキャンプを振り返り、高橋新監督が真っ先に名前を挙げたのも、やはりこの新人だった。紅白戦を含めたキャンプ中の実戦で22打数12安打。盗塁は五つ決めた。右飛で一塁からタッチアップして二塁を陥れるなど積極的な走塁も光り、首脳陣の評価はうなぎ登りだ。村田ヘッドコーチもべたぼれで、「ええ選手やわ。ほんま、ええ選手やわあ」。

 チーム内での愛称は「しげちゃん」。「一新」をスローガンに掲げたチームに、新しい風を吹き込んでいる。(山口裕起)