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 泥がついた青色の小さなジャージー。「熊町小 1年2組 きむらゆうな」。胸に縫い付けたゼッケンに、手書きの優しい文字がある。

 昨年12月13日、福島県大熊町の海岸で見つかった。「またちょっと、汐凪(ゆうな)に近づけた気がする」。木村紀夫さん(50)は白い防護服に身を包み、4年半の間、この場所で次女の汐凪ちゃん(当時7)を捜し続けている。

 ジャージーの文字は、妻の深雪さん(同37)が書いたもの。水洗いしたが、泥は落ちないままだ。

     ◇

 東京電力福島第一原発から南に約4キロ。海岸線から100メートルほどの場所に、木村さんと両親の家はあった。木々に囲まれた瓦ぶきの平屋の母屋には部屋が八つ。汐凪ちゃんは庭を走り回り、ここから学校に通っていた。

 足の不自由な同級生と一緒に遊べるよう、ハイハイでする鬼ごっこを考え出すような、利発で優しい女の子だった。

 5年前のあの日、津波が汐凪ちゃん、深雪さん、父の王太朗(わたろう)さん(同77)を奪った。家も基礎ごと流された。

 揺れがあったとき、木村さんは隣町の職場にいた。自宅にたどりついたのは夕方。飼っていたドーベルマンが裏の小高い丘から泥だらけで駆けだしてきた。夜通し、3人を捜し続けた。

 翌朝、原発事故による避難指示が出る。長女(15)と母(77)を連れ、町を離れざるを得なかった。4月、王太朗さんが自宅近くで、深雪さんがいわき市沖で見つかった。

 だが、汐凪ちゃんは見つからない。

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