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 「ここのお風呂はいいね。ぽかぽかするね」。80代のおばあさんが気持ちよさそうに口にした。渡辺久美子さん(44)は優しいまなざしで、「そうでしょう。湯冷めしないようにね」と声をかけた。

 福島県楢葉町のデイサービスセンター「やまゆり荘」。高台にあり、太平洋から心地よい風が吹き抜ける。

 昨年11月から介助員として働く。お年寄りの背中を流し、一緒に塗り絵をする。そんな時間を過ごしながら思いが募る。

 「父が生きていれば、ここにも連れてきてあげたかった」

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 震災のあの日まで、父の敏彦さん、母の満智子さんと3人で暮らしていた。

 大きな揺れ、津波、そして福島第一原発の爆発。町に避難指示が出るなか、家族でいわき市に避難した。

 父は震災の10年ほど前からパーキンソン病を患っていた。避難所や介護施設、病院を転々とした。