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 「もし可能なら、核兵器の先行使用の放棄を話し合うため、核保有5カ国が集まるよう受賞講演で提案しようと考えている」

 1974年11月19日、2年半前に首相を退いた佐藤栄作氏は東京・元赤坂の迎賓館でキッシンジャー米国務長官(当時)にこう伝えた。前月、ノーベル委員会は「非核三原則(核兵器をもたず、つくらず、もちこませず)」を67年に打ち出した佐藤氏への平和賞授与を発表していた。

 2人のやり取りは、春名幹男・早稲田大客員教授がフォード大統領図書館で2008年に確認した記録に残されている。

 「米国はそうした話し合いへの参加を拒んでいる唯一の国だ」とキッシンジャー氏は佐藤氏に答え、理由を告げた。「米国が核兵器の先行使用を放棄したとしたら、それは日本にとって危険だ」。軍事的脅威を増す共産国・ソ連と中国を念頭に置いた発言だった。

 面会から3週間後の74年12月11日、佐藤氏はノルウェー・オスロで「核時代の平和の追求と日本」と題した受賞講演に臨んだ。しかし、米国の意向通り、核先行使用の放棄に言及することはなかった。

 翌75年8月、米国は「核の傘…

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