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 東京電力福島第一原発の事故で風評被害に苦しむ福島県川俣町の農業を応援しようと、近畿大学(大阪府東大阪市)が同町のビニールハウスでポリエステルを土の代わりにし、熱帯の花アンスリウムを育てる研究をしている。年内には研究に参加する地元農家が農業法人を立ち上げる予定で、本格的な出荷を目指す。

 30メートルほどの長さのビニールハウスに、赤やピンク、アズキ色など5種類約2千株のハート形の花が咲く。その根元には、白い糸状のポリエステルが培地として敷き詰められている。

 近大が同町小島地区に提供したアンスリウムの試験栽培のハウスだ。原発事故後、同大の研究チームが町に放射能の測定調査に訪れたことが縁で、2014年春から栽培が始まった。

 川俣町は、福島第一原発から北西に約50キロ。山に囲まれた高原地で、畜産や葉タバコなど農業が盛んだ。ただ、事故後は、町の南東部が避難指示解除準備区域になり、区域の住民は町内の仮設住宅などに今も避難する。ハウスがある小島地区などは区域外で、農産物は安全基準を満たしているが、価格が下落したり、売れなかったりするなどの風評被害を受けてきた。町によると、地元農協などが東電から受けた農産物への損害賠償額は、川俣町全体で14年度は約6億6千万円にのぼったという。

 アンスリウムの試験栽培を担当する近大の林孝洋教授(園芸学)は「ポリエステルを培地にした栽培方法なら、地面に直接植えないので、風評に左右されることはないだろう」と話す。

 試験栽培に参加する地元農家の高橋佑吉さん(76)は「原発事故を気にせずできる農業なので、安心して生産できる」と期待する。昨年秋には東京の大手花店や全国に店を構える大手スーパーの関係者がハウスを視察。切り花として出荷できないか、相談している。

 今後は近大の支援を受けつつ、他の参加農家を募り、農業法人を立ち上げる予定。高橋さんは「4年後の東京五輪で選手たちに贈られる花束として提供するのが夢」と話している。(古庄暢)