[PR]

 1~2月に再稼働した関西電力高浜原発3、4号機(福井県高浜町)をめぐり、大津地裁の山本善彦裁判長は9日、福井に隣接する滋賀県の住民29人の訴えを認め、稼働中の原発に対しては初めて2基の運転を差し止める仮処分決定を出した。福島原発事故の原因が解明されていない中で、地震・津波への対策や避難計画に疑問が残ると指摘。安全性に関する関電の証明は不十分と判断した。

 関電は10日から営業運転中の3号機の停止作業に入る。一方で、決定の取り消しを求める保全異議や効力を一時的に止める執行停止を地裁に申し立てる方針。それらが認められない限り、差し止めの法的効力は続く。

 決定は、安全性の立証責任は資料を持つ電力会社側にもあるとし、十分に説明できない場合はその判断に不合理な点があると推認されるという立場をとった。

 そして東京電力福島第一原発事故の重大性を踏まえ、原発がいかに効率的でも、事故が起きれば環境破壊の範囲は国境を越える可能性すらあると指摘。安全基準は、対策の見落としで事故が起きても致命的にならないものをめざすべきだとした。そのうえで、前提となる福島事故の原因究明は「今なお道半ば」と言及。その状況で新規制基準を定めた国の原子力規制委員会の姿勢に「非常に不安を覚える」とし、新規制基準や審査について「公共の安寧の基礎となると考えることをためらわざるを得ない」と述べた。

 そのうえで、高浜原発の過酷事故対策について検討。電力会社が耐震設計の基本とする揺れの大きさ(基準地震動)について、関電が前提とした活断層の長さは正確といえず、十分な余裕があるとは認められないと判断。1586年の天正地震で高浜原発のある若狭地方が大津波に襲われたとする古文書も挙げ、関電の地震・津波対策に疑問を示した。さらに、新規制基準でも使用済み核燃料プールの冷却設備の耐震性は原子炉などに比べて低いレベルとされ、関電もプールの破損で冷却水が漏れた場合の備えを十分に説明できていないと述べた。

 また、高浜原発の近隣自治体が定めた事故時の避難計画に触れ、「国主導の具体的な計画の策定が早急に必要」と指摘。「この避難計画も視野に入れた幅広い規制基準が望まれ、それを策定すべき信義則上の義務が国には発生している」と述べ、新規制基準のもとで再稼働を進めている政府に異例の注文をつけた。

 高浜原発から約30~70キロ圏内に住む今回の住民らは、過酷事故が起きれば平穏で健康に暮らす人格権が侵されると訴え、決定もそのおそれが高いと認めた。

(島崎周)

     ◇

 大津地裁の仮処分決定を受け、関西電力は営業運転中の高浜3号機(出力87万キロワット、福井県高浜町)の停止作業を10日午前10時ごろから始める。3号機の原子炉に核分裂反応を抑える制御棒を差し込み、約10時間後に完全に止まる予定だ。止める期間が長くなると判断すれば、原子炉から核燃料を取り出し、貯蔵プールに移す。

 高浜3号機は1月29日に再稼働し、2月26日から営業運転。その日には4号機も再稼働したが、3日後の29日に発電・送電作業中のトラブルで原子炉が緊急停止した。3月9日に原因と対策を原子力規制委員会に出したが、この日の仮処分決定で動かせなくなった。

 関電は高浜の2基が運転できなくても、代わりに火力発電所を動かすことで「当面の電力の安定供給は確保できる」としている。八木誠社長は高浜3、4号機が営業運転に入れば、5月1日から料金を値下げすると表明していたが、先送りする方向だ。

     ◇

■決定理由の骨子

・原発の安全性の立証責任は関電側にもあり、十分説明できない場合は判断に不合理な点があると推認される

・福島原発事故の徹底した原因究明がなく、新規制基準はただちに安全性の根拠とはならない

・過酷事故時の安全対策が十分とは証明されていない

・国主導での具体的な避難計画の策定が必要。関電も避難計画を含む安全確保策に意を払うべきだ

     ◇

 〈高浜原発3、4号機〉 東京電力福島第一原発とは異なる加圧水型炉(PWR)で、ともに87万キロワット。1985年に運転を開始した。2011年3月の東日本大震災発生後、3号機は12年2月、4号機は11年7月から定期検査のため運転を停止。原子力規制委員会の適合性審査をへて、今年1、2月にそれぞれ再稼働した。4号機は2月末、変圧器の保護機器のトラブルのため緊急停止。冷温停止の状態に戻している。