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■特集(就活面接の裏側)

 就職活動のまっただ中。就活生はうまくいかず戸惑ったり、悩んだりする場面もあるはずです。百貨店の松屋で採用にたずさわる人事課長の川上由記さんと、能力開発チームマネージャーの手塚悠介さんに実践的なアドバイスを聞きました。「足を運んで情報を確認する」「就活は一人で悩まない」。こんな話をしてくれました。

 ――企業説明会にのぞむ就活生はまず何を準備すればいいでしょうか。

 手塚さん 「しっかり確認してほしいのは企業研究です。今年の就活は、3月の広報活動の解禁から6月の選考開始まで3カ月しかない。企業研究不足のまま就活をはじめ、選考にのぞみ、よくわからないまま内定、入社してしまうことが危惧されています。ミスマッチは企業にとっても、学生にとっても望ましくない。時間がないなかでも、企業研究をよく重ねてほしい」

 ――実際には何をすればいいでしょうか。

 手塚さん 「企業の業績は『会社四季報』などでおさえる。業界ごとの動向をまとめた『業界地図』といった雑誌もある。入社を決めるうえでも、おおまかな企業情報は必要です。企業側も採用ホームページを用意しています。まずはそうしたものを有効に活用すべきです。そのうえで、企業説明会やOB・OG訪問で、実際に働く人の話を聞いてほしい。想像していることと、実際の現場とでは、違うことはずいぶんあるはずです。例えば、百貨店は華やかなイメージが先行していますが、その舞台を支える裏方は力仕事など地味な仕事もたくさんあります。そこにはもちろんやりがいもあります。そういったことを聞いて、働くことをイメージしてほしい」

■リアルな情報にふれてほしい

 ――注意するべき点は何ですか。

 川上さん 「いまの学生は、情報収集は得意です。自分で足を運ばなくても情報が入る時代です。なおさら自分で足を運んで、目で見て、肌で感じて情報を確かめることが大事です。それを痛感しています。就活だけではなく、社会に出て働くうえでも重要なことです。例えば、お客様の平均購買額が30万円だというデータがあった時、どんな商品を売り場展開すればいいか。その時に30万円の商品ばかりをそろえたら間違いになりかねません。200万円の高額商品が売れる場合もあれば、ほとんど何も買わない人もいるはずです。それを実感するには、売り場に足を運ぶしかないのです」

 ――就活生も売り場に足を運んでみるべきだと?

 川上さん 「百貨店を巡ってみてほしい。就活面接の場面でも、話す内容に深みがでてきます。自分で商品を触ってみる、店員と話をしてみる、いろいろな話の引き出しになるはずです。面接で『百貨店にはよく行きますか?』とたずねると、『幼いころに母と行きました』と話す学生もいます。ちょっと驚きます。情報に対して受け身にならないでほしい」

■まず主体性と対話力を見極め

 ――求める人材像はどういうものですか。

 手塚さん 「弊社の求める人物像は、『自らの考えで行動し、変化に的確に対応できる自立型人材』という言い方をしていますが、主体性をもって新しいものごとに挑戦できる人。自分からすすんで頭を使い、仮説を立てて、行動して検証する、そういったサイクルをまわしていける人です。百貨店での就活を例にとれば、たくさんの百貨店があるなかで、それぞれの個性や特性を把握したうえで、志望の百貨店の理由を説明できれば説得力が増します。それを可能にするのはやはり、お店に足を運んで、百貨店ごとの店づくりの違いを自分の目で確かめてみることです」

 川上さん 「コミュニケーションスキルも大切です。バイヤーになりたいという学生も多いのですが、モノを相手にするのだから人は関係がないということはありません。交渉するのはバイヤーで、人が相手です。はじめの面接では、主体性とコミュニケーションスキルを見極め、その次の段階で学生時代にその人がどんなことに力を入れてきたのかをお聞きします。一つのエピソードだけではなく、複数のケースを聞くようにしています。経験の結果だけではなく、どういうプロセスを踏んで、その人がどう考えたか、肯定的に引き出すようにしています」

 「例えばサークル活動についてお聞きする際、『その人数』『どういう役割を担ったか』『苦労してきたこと』などと質問は短いですが、掘り下げていきます。そのなかで、挫折や苦労があったとしても、どう乗り越えて、いまどう考えているのか、どうすればもっと改善できたのか、そういうことをちゃんと考え、整理してきたのかを、引き出します。採用する側は、同じタイプの人材を求めてはいません。仕事はチームでします。いろんな個性があった方が好ましいのです。自立型の人材像という軸はありますが、どういう学生時代を過ごしてきたのかを聞き、個性を見極めたいのです」

■面接が苦手なら練習を重ねる

 ――どういう面接が印象に残りますか?

 川上さん 「考えに深みがあり、引き出しをたくさん持っている学生との面接はポンポンと会話が弾みます。笑いを誘い、こちらも楽しくなるような学生は、一緒に仕事がしたいなと思うことがあります。一方で、あまり考えてこなかった学生は、会話が長続きしない。そんな時はどうしてもその人の本質が見えないという判断になってしまう」

 ――話すことが苦手な人はどうすればいいですか。

 手塚さん 「話はうまくないけれど、こちらがうまく引き出せば、自分の考えを持っていて、それに基づいて行動していることがわかるケースは多い。うまい表現はできなくても面接では熱意は伝わります。逆に話は上手なのに、中身が伴っていないケースもあります。たどたどしくても、自分の考えをしっかり持っていれば、あとは何回も練習を重ねていくことが大切だと思います」

 川上さん 「話すのが不得手だったら、だからこそ準備をしてほしい。自己分析をはじめ、自分の考えをきちんと整理する。大学のキャリアセンターでも、面接の練習などは積極的に取り組んでいます。そういう場をどんどん利用するべきです」

 ――自己分析はどうすればいいのですか。

 手塚さん 「例えば、百貨店を受けようと思った時、『なぜ百貨店なのか』を考える。『人と接するのが好きだから』なら、次に『なんで人と接するのが好きなのか』を考える。どんどん深掘りして自分の原点となるものを突き詰める。それを話せば、自分の志望理由が説得的に説明できる。なんとなく好ましいと思っていることに納得性が生まれ、そういう背景があったから志望したと言えれば、企業側も納得する。入社後のミスマッチもなくなります」

 川上さん 「自分の長所と短所を整理したうえで、こういう強みがあるので、会社でこういうことができると言えればさらに納得性が増します」

■就活は一人で悩まず周囲に相談

 ――この時期の就活生に対するアドバイスを教えてください。

 手塚さん 「志望業界が決まっていないなら、いろんな業界をみて確認してほしい。いろんな話を聞いて、自分の視野を広げてほしい。それと、一人で就職活動をしないでほしい。もちろん、一人で考える時間も大切ですが、友人や大学のキャリアセンターなどといろんな話をしながら就活をすすめてください。一人で悩みを抱え込まないことが大切です。就活は孤独な戦いになりがち。悩みに入り込んでしまうと、悪い方向にいってしまう。友人との情報交換や客観的なアドバイスが助けになり、自分の知らなかった可能性に気づくこともあるはずです」

 川上さん 「就職は、人生のゴールではありません。その先が大事です。先行きの働き方について目標を持つことは大切ですが、就活で『これがやりたい。これしかやりたくない』と固まらないでほしい。思ってもみなかった業界で、新しい自分の発見や成長があるかもしれません。実際に働いてみて気づくこともたくさんあります。視野を狭くして自分の可能性も狭めてしまわないようにしてほしい。そんなことも頭の片隅に置いてください」(海東英雄)