[PR]

 東日本大震災を経て、心に浮かぶ風景などをインスタグラムを通じて募集した「#震災わたしはいま」。福島県いわき市の山崎愛奈さん(24)は、勤務する鮮魚店の週一日の休日に撮影した、地元の小名浜地区の風景を投稿した。

 大きな橋の建設が進む港の様子、冬の朝に民家の屋根から立ち上る湯気、裏路地の猫……。インスタグラムに投稿する時には必ず、「#311 その後。#伝えたい」とハッシュタグを添える。

 「3月11日が近づくと、ニュースでは津波の写真が多くなる。街が復興していく様子や穏やかな小名浜の様子も伝えたくて」

 震災発生時は19歳。自宅は津波の被害こそ免れたものの、壁がぼろぼろに崩れて住めなくなった。しかし、末期がんを患っていた父を残して避難できず、母と弟と交代で看病しながら、唯一残った6畳一間で4人、父が亡くなる4月9日まで寝起きした。

 あれから5年。高校生だった弟は社会人になった。津波で無残に壊れた港は整備され、遊覧船が陽気な音楽を流して、カモメがそれを追っていく。一時はがれきでいっぱいだった辺りも更地になり、大きなショッピングモールができるという。

 様変わりしていく街を目の当たりにして、「地元のことを何も知らなかった」と初めて気づいた。昨年3月11日、ふと思い立ち、自宅から30キロ余り、写真を撮りながら海沿いを歩いた。「がんばっぺ」と書かれた看板、穏やかな海の景色。震災後に造られた防潮堤が壁になり、海が見えない場所が増えていることも知った。

 震災後、地域の人が自主的に、街を盛り上げようと企画するイベントが増えたと感じる。山崎さん自身、震災前に感じていた「いつかは街を出たい」という思いは、この5年で「ここで生きていきたい」に変わっていた。

 今年の3月11日も、自宅から職場のある北茨城市まで歩いて、海沿いの様子を写真におさめた。「街がどんな風に変わっていくのか。今後も記録し、発信し、これから生まれる子供たちにも伝えていきたい」