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 京都の小さな町寺に伝わる「仏涅槃図(ぶつねはんず)」が、国の重要文化財に指定されることになった。近年まで「現役」で法要に使われていたが、数少ない平安時代後期の作とわかったためだ。激しい傷みを本格修理するめどが立ち、関係者は喜びをかみしめている。

 西念寺(さいねんじ、京都市下京区)の仏涅槃図(縦172・5センチ、横206センチ)は入滅する釈迦を弟子や動物が取り囲み、嘆き悲しむ様子を描く。2009年まで毎年2月の涅槃会の法要に掛けられていたが、同年8月の学術調査で評価が一変した。

 釈迦が横たわる台の足側の側面が描かれ、衣部分の截金(きりかね)文様の滑らかな曲線や全体の色調の柔らかさなどが平安仏画の特徴を備えていた。高野山金剛峯寺の国宝「応徳涅槃図」(1086年)や東京国立博物館所蔵の重文の仏涅槃図(12世紀)にも匹敵する涅槃図と判明。調査した京都国立博物館の大原嘉豊(よしとよ)・保存修理指導室長は「まさか平安仏画を発見できるとは驚いた」と振り返る。

 一方、長年の使用で絵が描かれている絹と裏打ち紙がはがれそうになるなど傷みが激しい。修理費約2千万円のうち、重文に指定されれば半額以上の国庫補助が見込まれるが、未指定のままでは全額所有者の負担。重い負担に備え、寺の岩田廓然(かくねん)前住職(故人)と息子の浩然(こうねん)・現住職(70)は13年から寄付集めに乗り出した。

 「傷んだままでは仏さんが泣いてはる」と100万円単位で寄付する檀家(だんか)も。13年秋と15年春には、拝観料を文化財修理に充てる「京都非公開文化財特別公開」(京都古文化保存協会主催、朝日新聞社特別協力)に参加し、数千人が拝観。3年ほどで約1千万円が集まるとともに、今月11日の文化審議会で重文指定が答申され、何とか修理のめどが立った。

 今後4~5年かけて修理され、完成後に一般公開される予定。大原室長は「調査から7年でのスピード指定は関係者すべてが修理に向けて努力したたまもの。完成後は日本美術の頂点とも言える作品をご覧いただき、日本文化の奥深さを感じてほしい」。岩田住職は「たくさんの人の心のこもった浄財で修理できることが何よりうれしい。きれいに直った姿を皆さんに見てもらいたい」と話す。(久保智祥)