教科書検定を通り、来春から高校で使われる教科書には、実用的な英語や防災知識など時代を反映した内容が盛り込まれた。貧困や2020年東京五輪といった事象も登場している。

 今回初めて盛り込まれる出来事や人物、技術などが随所に見られた。

 「The Power of Sports(スポーツの力)」。桐原書店はコミュニケーション英語Ⅰで、こんな題の見開きページを設けた。2020年五輪・パラリンピックの開催地を決める13年の会議で、パラリンピックの佐藤真海選手が東京開催を訴えた英語スピーチを載せている。

 20年東京五輪・パラリンピックが高校教科書で説明されるのは今回が初。英語や保健体育、公民など7教科で取り上げられた。

 東京書籍は、コミュニケーション英語Ⅰで「パラリンピックの父」と呼ばれた英国の医師グットマン博士を紹介。三省堂は英語表現Ⅰで、20年五輪に関する会話文に新国立競技場のイメージ図を掲載。当初は建築家ザハ・ハディド氏の案だったが、検定で「生徒が誤解する恐れがある」と指摘され、その後に採用された隈研吾氏の案に差し替えた。

 帝国書院は現代社会で「オリンピックの経済効果」という欄を設けた。インフラ整備により「新たな需要や雇用を生むので、景気がよくなる傾向にある」などとする一方、「閉会後はその反動で景気が後退する傾向」と書いている。

 地歴公民では新たな国際情勢の記述が目立つ。「難民を生みださない世界のために」と2ページで新たに特集したのは、東京書籍の世界史B。難民の出身国別人数をグラフで示し、「日本での受け入れの実態」などを調べる課題を示した。実教出版も現代社会で国際情勢に関するページを2ページに増やし、シリアやウクライナの内戦などを取り上げた。「情勢が複雑に変化していて、現行のページ数ではとても伝えられない」と担当者は話す。

 多様な性を示す「LGBT」という言葉が初登場するなど、家庭科では全16点で性的少数者や多様な家族のあり方を紹介。実教出版は性的少数者に関する社会課題として「学校や職場、家族から疎外されること」と書いた。開隆堂は、女性同士で「結婚式」を挙げたタレントの写真を載せた。

 「インタビューも英語でこなし、世界中で活躍する姿は高校生の理想像としてぴったり」(三省堂の担当者)などの理由で英語に初掲載されたのが、テニスの錦織圭選手。

 音楽では、人気バンド「SEKAI NO OWARI」を教育芸術社が掲載。「電子音」の歌声が特徴のバーチャルアイドル「初音ミク」とともに、「新しいボーカル像」と紹介。「音のパーツを合成して歌声を作り出す」ため、「つくり手が必ずしもプロフェッショナルな音楽家に限定されない」などとした。

 美術では初めて、「拡張現実(AR)」と呼ばれる技術が登場。専用アプリを使うと、教科書の写真にかざしたスマホに作品の紹介動画が流れる仕組みだ。導入した光村図書の担当者は「美術館などへ行かないと体験できない世界に教科書からアクセスできる意義は大きい」と話す。

■企業や商品名、どこまで許容

 LINE(ライン)はダメ、フェイスブックとツイッターはOK――。企業や商品名などの掲載をめぐり、文部科学省が宣伝を認めない検定基準に基づき意見を付ける事例があった。教科書会社も、工夫を凝らしている。

 ネット上のサービスを取り上げた情報科の教科書について、文科省は「課金の有無で判断した。LINEはゲームなどの有料サービスがある」と意見を付けて修正を求めた。英語では、テニスの錦織圭選手の写真で背景に写った「楽天」などの看板に意見が付いたが、ウェアの「ユニクロ」はOK。「スポーツのユニホームは『写り込み』で許容範囲内」という。

 ロゴや看板が「塗りつぶし」ばかりの教科書では味気ない。缶コーヒーや洗剤などの商品名やロゴを加工して掲載する社も。編集担当者は「基準内で、見慣れた製品を載せて身近に感じさせたい」。

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