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 作家、劇作家の井上ひさし(1934~2010)が学生時代にフランス語戯曲を翻訳した生原稿が完全な形で見つかった。井上の本格的な翻訳が世に出るのは初めて。井上文学を考えるうえで貴重な資料だ。

 見つかったのは、フランスの文学・演劇界で重きをなしたアンリ・ド・モンテルラン(1896~1972)の戯曲(48年初演)。ペン書きで鉛筆で推敲(すいこう)の跡がある原稿用紙87枚がとじられ、題名「讃血亜護(サンチャゴ)騎士団長」などを手書きした表紙がつく。内容はスペインの新大陸進出を背景にした宗教色の強い3幕劇だ。

 この原稿は、東京都内の古書店「龍生書林」の大場啓志さんが約3年前に個人から入手した。大場さんは「出来ればご家族に譲りたいが、直接連絡して売りつけるようなことになっては失礼」と考え、昨年末、店の目録に載せた。それに気づいた作家で古書店主の出久根達郎さんから、元編集者を介して連絡を受けた井上の妻ユリさんが、今年1月に購入した。「手に入れることが出来てよかった。手作りの製本が、工作好きだったひさしさんらしい」と語る。