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 段ボール箱にゴロゴロと入れられた豚足。網の中でモゾモゾ動くスッポン。ポリ袋入りの20羽分以上の鶏の足……。豚耳や豚鼻、冷凍カエルもある。

 東京都台東区のアメ横。5階建ての「アメ横センタービル」の地下食品街では、六つの店で日本では見慣れない食材が売られている。

 肉や野菜、スパイスが店頭に並ぶ「野澤屋」の滝上昌宏さん(59)は「客の6割は中国人、3割が韓国や東南アジア、中東系の人たち」。残りの1割が日本人だ。トイレを探してビルに迷い込んだ日本人客が、雰囲気に圧倒されている光景も珍しくない。

 いま、よく売れるのが卵を産まなくなった鶏の肉。一羽350円だ。中国人の若者が「留学生仲間で鍋でつつく」と、5羽、10羽を箱買いしていくという。

 もとは高級珍味を扱っていた野澤屋。客のニーズに応えるうちに、日本人向けの商品は店頭から姿を消した。最近増えたベトナム人客向けに、ベトナムの食材や生活用品が存在感を増している。

 アジアの匂いに満ちた地下空間。もちろん、そこを目指してやって来る日本人もいる。

 「地下食品街には、本場の、本物の食材がある。最適な食材を探すのは大変だけど楽しかった」。中野区の飲食店アルバイト、東山広樹さん(29)は言う。「汁なし担々麺」の自分の店を開こうと、現在、23区内で物件を探している。

 「辛いだけ」「スパイスの香りがきつい」「プロの味じゃない」。昨年10月、出資を約束してくれた会社員の友人ら4人に試作品を食べてもらうと、酷評された。試食会で前売り券(6食分、5100円)を50枚売ること――。そんなノルマを課されたが、最初の試食会では17人に食べてもらい、1枚も売れなかった。

 食材を探してアメ横に通った。試した組み合わせは約1千通り。センタービルの地下食品街で見つけた中国のトウバンジャンや10種類の唐辛子、黒酢……。