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 医療やボランティア活動などで熊本県や大分県の被災地に入る人たちと、方言を使う地元の高齢者がうまくコミュニケーションできるよう、言語学者らが語彙(ごい)集を公開している。医療分野を優先し、まず体の部位を表す言葉や基本的な感情や動作の表現をまとめた。カウンセリング、ボランティアで必要とされる語彙も随時追加していく。

 熊本は、北部(熊本市など)、東部(阿蘇市など)、南部(八代市など)の地域ごとに方言がある。今回の語彙集は、高齢者が使う表現を取り上げ、地域の違いを対照させたものもある。たとえば「ビンタ」は、主に北部では「ほお」の意味だが、南部では「頭」の意味で使うこともある。

 診療中に指をさして使えるよう、人体の絵に各部位を示す言葉を書き込んだ図を作った。声をかけられた人がほっとして心を開いてくれるよう、あいさつや受け答えの表現も紹介している。

 大分県は、支援拠点のある竹田市など大分南部の語彙集から公開を始めた。

 福岡女学院大の二階堂整教授、弘前学院大の今村かほる教授、高知大の岩城裕之准教授ら、複数の方言研究者グループが協力している。東日本大震災の時、地元の高齢者が他地域から来た医師に痛む箇所を伝えられないなど、方言がコミュニケーションの壁になった経験を教訓にした。

 「熊本支援方言プロジェクト」で検索すると、福岡女学院大学のサイト(http://www.fukujo.ac.jp/university/other/hougenpjt.html別ウインドウで開きます)などで語彙集や図を入手できる。(高重治香)

■熊本各地で高齢者が使う方言の例

(二階堂整・福岡女学院大教授作成の資料から)

●頭 【南部】ゴラ、ガンゴラ、ビンタ

●かかと 【北・東部】アド【南部】アド、アシンハラ

●唇 【全域】ツバ、スバ

●しり 【北部】シリベタ、シリビタ、ジゴ【東部】シリベタ、シリビタ【南部】ジゴ、グス、ブン

●背中 【北部】ゴタ、ヘキ【東部】ゴチャ、ヘキ【南部】ゴテャー、ゴタ、ゴチャ、ヘキ

●ふくらはぎ 【東部】ツト、ヒッカガミ【南部】フクラ、ツト

●妊婦 【北・東部】コモチ、ミモチ【南部】コモチ、ミモチ、ドンバラ

●大便 【北部】クソ、バ、ベ、ギタコロ【東部】クソ、ババ【南部】クソ

■誤解しそうな方言(熊本県)

(東北大学方言研究センター作成)

●「来る」が「行く」の意味で使われる

●「直す」が「片づける」の意味で使われる

●「わからん」が「だめだ」の意味で使われる

●「ぬくい」が「暑い」(適度な温かさでない)の意味で使われる