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■2030 未来をつくろう

 グローバルヘルス(国際保健)の分野でかつてない進展が起きている。極度の貧困の中で暮らす人は四半世紀前より10億人減り、子供の死亡率は半減した。ポリオは撲滅に近づいている。

 目覚ましい変化により、世界は多くの人にとってより良い場所になった。だが成功が危機感の欠如を生み、最も貧しい人々の前にいまだ立ちはだかる医療や経済の深刻な問題が私たちの優先事項から外されてしまう危険がある。

 それは悲劇的な過ちとなるだろう。毎年600万人近い子供が5歳になる前に命を落としている。結核で亡くなる人は毎年100万人を超え、昨年マラリアで死亡した人は40万人を超えた。病気による人的・経済的損害は最も弱い人々に最も重くのしかかる。

 だからこそ世界の指導者が日本に集うG7サミットは、より公平な世界を築く努力を続ける中で重要な節目となる。国連は昨年、極度の貧困や予防可能な母子の死亡を2030年までに根絶する、野心的だが実現可能なロードマップ「持続可能な開発目標(SDGs)」を採択した。伊勢志摩サミットは、その後初めて開かれるサミットになる。

 サミットは日本がグローバルヘルス分野で確立した指導力の実績を生かす機会でもある。重要な貢献を示す素晴らしい事例に、世界エイズ・結核・マラリア対策基金(グローバルファンド)への支援がある。基金は世界3大感染症のエイズ、結核、マラリアによる影響の軽減に成果を上げてきた。日本は00年の九州・沖縄サミットで、この重要なパートナーシップ構築に向けた取り組みを主導し、設立後は、最大拠出国の一つとなった。

 成果は絶大だ――基金に1億ドル拠出するたびに6万人の命が救われる。日本は来年も国力に見合う拠出をし、GAVIアライアンス(予防接種とワクチンの普及の国際機関)など、他の重要な取り組みへの支援強化策を模索することで、引き続き人命を救い、他国の継続的な支援を後押しできる。

 日本はまた、研究・開発(R&D)投資で大きな成果を上げつつある。3年前にビル&メリンダ・ゲイツ財団と日本政府などが設立したグローバルヘルス技術振興基金(GHIT)では、日本の製薬会社や大学、研究機関の多大なイノベーション力を活用し、新たなワクチンや治療薬、診断用ツールの開発を加速させている。

 初期成果は有望だ。東京医科歯科大の研究者は、若年層の結核予防で飛躍的な前進となり得るワクチンを開発した。愛媛大の科学者はマラリアの伝染を阻止する新型ワクチンに取り組む。また武田薬品工業は、既存の治療薬に耐性を持つマラリア原虫に感染した子供向け新薬の治験を行っている。

 財団は9日、ポリオ撲滅で重要な役割を果たすであろう、手ごろな価格のワクチンの開発と製造に関し、武田に3800万ドル(約40億円)を投資することを発表する。

 誰もが健康で実りある生活を送る機会を手にする世界を築くには、こうした連携が不可欠である。だが目標に向かって前進し続けるには、他にもやるべきことがある。私たちは、貧困国が自国のプライマリーヘルスケア(一次医療)のシステムをより強靱(きょうじん)で持続可能なものにする取り組みを支援する必要がある。一次医療は良好な健康の土台であり、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(基礎的保健医療サービスの提供)の実現に不可欠である。

 日本はパンデミック(世界的大流行)の脅威に対する国際的な取り組みにも重要な役割を果たせる。エボラ出血熱流行の重要な教訓は、強靭な一次医療システムが整った国では大流行に効果的な対処が可能であるという点だ。今回のジカウイルス感染症(ジカ熱)の拡大から明らかなのは、新たな病原体の出現に対して世界規模で体制を整えるには一層の投資が必要だということだ。日本は議長国として伊勢志摩サミットや9月のG7神戸保健大臣会合でこれらの課題への喚起を促すことができる。

 日本の共催で8月にケニアで開かれる第6回アフリカ開発会議(TICAD)でも、日本の指導力が注目を集めるだろう。今回のTICAD会合は、日本が1993年に会議を創設して以来初のアフリカ開催である。

 アフリカに暮らす大半の人々が農業を主な収入源にしていることを考えれば、TICADは、気候変動の影響に対する適応への世界的な行動を促す機会になる。アフリカの農家の多くは食べるだけでやっとの生活で、異常気象による作物収穫量への影響に極めて弱い。貧しい農家に対する支援計画への投資拡大要請の場としてTICADを活用することで、日本はこうした状況に変化を引き起こすことができる。

 4月に熊本で起きた壊滅的な地震は、人々の暮らしの脆弱(ぜいじゃく)さと、困難な状況でいかに私たちが支え合っているかということを気づかせてくれる。きわめて悲惨な国内の状況に対応する日本の姿は、海外で困難な状況に置かれている人々への思いやりに通じるところがある。国力や寛容さ、慈愛といった比類のない組み合わせを持つ日本だからこそ、グローバルヘルスや途上国の開発問題の解決に向けて重要な指導力を発揮できるのだ。

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