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 慢性疲労症候群(CFS)の現状について、厚生労働省CFS研究班代表の倉恒弘彦・関西福祉科学大教授に話を聞いた。

 ――どんな病気ですか。

 「元気だった人が感染症などをきっかけにして、それ以降激しい倦怠(けんたい)感に襲われ、これまで何の苦痛もなくできていた作業をするだけで、体調が悪化して動けなくなる。睡眠でも回復せず、微熱や筋肉痛、関節痛、睡眠障害、思考力・集中力の低下といった症状が半年以上続き、日常生活に『重篤な支障』を来す」

 ――いつごろ顕在化したのでしょうか。

 「1980年代、米ネバダ州の2万人の村で、原因不明の激しい疲労で200人ぐらいが集団で学校や会社に行けなくなった。人口の1%にあたり、米国は病態の解明に向けた調査を始めた。最初に対象者を絞り込むための基準が作られて、それがこれまで診断基準としても使われてきた」

 ――国内にどのくらい患者がいるのでしょうか。

 「日本で行われた疫学調査では、約0・3%の人がCFS臨床診断基準を満たし、単純に15~65歳未満の生産年齢人口8千万人にあてはめてみると約24万人、総人口(1億2千万人)では約36万人だと推測される。また、日本における経済損失は医療費を除いて年間1・2兆円と推計する報告がある。しかし、多くの医療機関でまだこの病気が認知されていないのが現状だ。大阪大が20年ほど前に200床以上ある病院に行ったアンケートでは、回答がないか、あっても病気を知らないというのがほとんどだった」

 ――発症の仕組みは分かっているのでしょうか。

 「まだ未解明だが、最近、脳のCT検査で、通常の検査では異常がみられない患者でも脳神経系の炎症がみられることが分かった。重症患者では、明らかに脳幹部を中心に炎症が存在した。炎症の程度と認知機能や体の痛み、抑うつ状態に明らかな相関がみられた。現在、CFS患者の脳神経系の炎症と関連した自然免疫系や血液検査異常などが調べられており、将来はスクリーニング検査を行って疑わしい症状がある。患者をこのCT検査で確定診断することも可能になると考えている」

 ――現在はどのような治療が行われていますか。

 「多くの患者は生活環境ストレスに伴い免疫力が低下している。このため、体内のウイルスや細菌が活発化し、それをやっつけようと免疫物質が作られる。これが脳の中にもできてしまうため、神経細胞の機能に障害が引き起こされる。重症になると炎症も起きる。だから、まずは免疫力を高めるために漢方薬を処方する。活性酸素を抑えるため、ビタミンCやE、カルニチンなどを摂取できる健康補助食品も併用する。それでも良くならない人は炎症を抑える治療を行う」

 ――治療でどの程度良くなるのですか。

 「治療で社会復帰する人が20%、治療しても良くならずに日中も横になり、家族の介助が必要な重症の人が25%いる。一方で55%の人は良くなったり、悪くなったりをくり返している。この人たちをきっちり社会に復帰させる手助けがまだまったくできていない」

 ――国にはどのような対応が求められていますか。

 「厚生労働省に三つのお願いをしている。一つは各都道府県に病気を診られる医療機関を設置すること。二つ目は、重症の人をきちんと公的な介助、支援できる体制を確立してほしい。三つ目は社会復帰の支援。理学療法や作業療法が必要な場合、手助けしてもらえる制度を作ってほしい」

 ――CFS研究班では何に取り組んでいますか。

 「厚労省はこの病気を支援していく必要を認識している。3年前の障害者総合支援法の施行で、知的、身体的、精神的障害以外の病態も支援していこうとなり、『難病等』という幅広い病態に対する支援制度が始まった。慢性疲労症候群に対してこの支援制度を活用するには、客観的指標を含んだ診断基準が必要だ。現在はその基準作りを進めており、夏までには発表したいと考えている」

 「診断基準は、限られた医療機関でしかできない難しいものにすると患者負担が大きいので、開業医の先生も使えるようなものにする必要がある。さらに重症度の基準も設け、それらを満たせば支援が受けられる方向に落ち着くのではないか。昨年7月には国内における治療ガイドラインの作成を目指した研究班も発足しており、2018年3月には発表される予定だ」

<アピタル:ニュース・フォーカス・特集>

http://www.asahi.com/apital/medicalnews/focus/(聞き手・小川直樹)