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 トルコで15日夜(日本時間16日未明)、軍の一部がクーデターを企て、軍参謀司令本部を占拠して、国営テレビで「全権を掌握した」とする声明を出した。軍の反乱勢力は正規軍の部隊と戦闘状態になったが、鎮圧され、未遂に終わった。トルコ政府は反乱勢力の多くを拘束し、事態は政府と軍の統制下にあると宣言した。首都アンカラなどで続いた戦闘はおさまった模様だ。

 トルコのユルドゥルム首相は16日午後0時半(同午後6時半)ごろに記者会見し、反乱で市民や治安部隊などの161人が犠牲になり、1440人が負傷したと発表。軍の反乱勢力側の兵士ら2839人が拘束されたと述べた。ほかに反乱勢力が100人規模で死亡したとの情報もあり、全体の死傷者数はさらに増える可能性がある。

 首相は「クーデターの企ては軍の指揮系統で行われたのではない」とも語り、米国亡命中のイスラム教指導者ギュレン師を支持する軍の一派の企てだとした。ギュレン師はエルドアン大統領の政敵とされる。軍の参謀総長代行は「クーデターは阻止された」と述べ、反乱勢力は空軍、憲兵隊などで構成されていたとしている。

 アナトリア通信は16日夕、クーデターに関連した容疑で、トルコ軍最高幹部の1人が拘束されたと報じた。

 地元メディアによると、トルコ当局は、裁判官ら2745人の職権を一時停止し、司法関係者10人を拘束した。同国のアナドル通信は、同委員会の5人のメンバーも解任されたと伝えた。司法権力からのギュレン派の一掃を狙う動きの可能性がある。

 クーデターの企てが始まったのは15日夜。軍の反乱勢力は、トルコ国営テレビTRTを通じて「国の全権を掌握した」との声明を発表した。「民主主義が現政権によってむしばまれていた」と動機を説明し、「可能な限り早く新しい憲法を準備する」とした。

 ロイター通信やトルコメディアの報道によると、首都アンカラの参謀司令本部でアカル参謀総長らが拘束された。反乱勢力は戦車で国会を砲撃した。参謀司令本部前で反乱勢力のヘリコプターが発砲し、多数が死亡した。大統領府近くでも爆発が起き、軍用ヘリコプターが情報機関の建物に砲撃したという。

 アカル参謀総長は16日朝に救出され、その後も参謀司令本部には人質となった士官らが残っていたが、間もなく奪還されたという。

 最大都市イスタンブールでは軍が群衆に発砲したとの情報が流れ、中心部のタクシム広場で政権支持の警察と反乱軍との間で銃撃戦になり、アタチュルク国際空港などでも銃声が聞こえた。

 与党・公正発展党(AKP)を事実上率いる最高実力者のエルドアン大統領は、トルコ南西部のリゾート地に滞在していた。16日未明、テレビ電話で民放CNNトルコに出演し、国民に「外出して(反乱)軍に対抗を」と呼びかけた。その後イスタンブールのアタチュルク国際空港に着陸し、「すべての兵士に呼びかける。この過ちからすぐに戻るべきだ」と述べた。実際、イスタンブールやアンカラで、AKPの支持者らが街頭に繰り出して戦車を取り囲んだ。野党各党も政権支持を表明した。欧米各国や国連も反乱勢力の武力行使に反対した。同空港で離着陸を一時停止していたトルコ航空も運航を再開した。

 一方、ギリシャ北部アレクサンドルポリスの空港にトルコ軍のヘリコプターが着陸した。ギリシャ当局は乗っていた男8人を拘束。男たちは政治亡命を求めているという。

 トルコ政府は反乱勢力に厳しく対応する方針を示唆しており、首相は16日の会見で、クーデターの企てをトルコの民主主義の「汚点だ」と強く非難。「トルコの憲法に死刑はないが、(反乱が)二度と起きないよう法改正を検討する」と述べた。エルドアン氏が近年の強権的な傾向をさらに強める可能性がある。また、過激派組織「イスラム国」(IS)との戦いで重要な役割を持つトルコの不安定化で、テロの危険が増すとの指摘もある。(イスタンブール=春日芳晃、カイロ=翁長忠雄)