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 人間は1分間に平均20回まばたきをします。目を潤すためだけなら1分間に3回で十分と約90年前に判明しています。なぜこんなに多くまばたきをするのか。長年なぞでしたが、その理由が最近の研究で次第に明らかになってきています。

 「脳と関わっているのでは」と考えたのは、大阪大准教授の中野珠実さん(認知神経科学)。14人の視聴者に英国のコメディー番組を見せると、主人公が車を止めた瞬間や車のドアを閉めた瞬間で一斉にまばたきしました。海中を魚が泳ぐ物語性のない映像ではそろいません。私たちは無意識に、動作の区切り目を見つけ、まばたきしていると考えました。

 その時の脳の活動をみると、まばたきの瞬間、考え事をする際に働く領域の活動が上がり、注意を払う際に働く領域の活動が下がりました。「目に入る映像にまばたきで句読点を打つことで、情報を記憶し、注意力をリセットして次の映像に備えている」。集中を持続するため、一時的に脳を休ませる効果があると考えています。

 まばたきは「伝染」することもわかってきました。

 TVドラマの演説シーンを視聴者に見せると、主人公が話の区切り目でまばたきした時、視聴者も引き込まれてまばたきしていました。「私たちは対面して話す時、無意識のうちに情報を共有して、互いの理解を深めているのでは」と中野さんは言います。同じ実験を、対人関係を築くのが苦手な自閉症スペクトラム障害の患者18人にすると、このような現象は起きませんでした。

 「伝染」は寄席(よせ)の場でも。東京大特任助教の野村亮太さん(心理学)は古典落語の映像を、視聴者7人が一緒の部屋にいる場合と、一人ずつ別の部屋にいる場合の二つに分けて見せました。その結果、7人全員で見た方が、1人で見るよりまばたきのタイミングのずれが半分に減っていました。他人の笑い声や体の揺れが影響しているようです。一人が複数役を演じる落語は筋を追うのが簡単ではありません。「同じタイミングでのまばたきを話の理解に役立てている可能性がある」と野村さん。寄席はみんなで見た方が理解しやすく面白いのかもしれません。

 まばたきが、コミュニケーションの手段として発達した可能性を指摘する研究もあります。京都大霊長類研究所などが71種141匹の霊長類を調べると、群れの規模が大きくなるほど、まばたきの回数が増える傾向がありました。「天敵を警戒する必要が薄れ、まばたきが可能になり、仲間との意思疎通に使ったのか」と霊長類研教授の友永雅己さん(比較認知科学)は推測します。

 一方、まばたきが多い候補者は…

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