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■小さないのち 奪われる未来

 「おじさんが弟を殴ったり蹴ったりした」。三重県の中学生の姉が学校で担任に告げた。

 小学1年の弟への虐待の疑いがあるとみて、その夜、学校から連絡を受けた児童相談所(児相)の職員と警察官3人が家に向かった。布団で寝ている弟の姿を玄関から見て、その場を離れた。翌朝、弟が意識不明になっていると姉が110番通報した。

 弟は児相職員が訪れた日の午前、姉が「おじさん」と呼ぶ母親の交際相手の男から激しい暴行を受けていた。男は逮捕され、弟には重い障害が残った。

 事件から半年後の2010年秋、三重県はその経緯を分析した「検証報告書」をまとめた。事件の数カ月前から弟の腕の傷痕や、姉が顔面を腫らして登校するなどのサインがありながら、一時保護などの対応が取られず、虐待を止められなかった経緯が書かれている。

 報告書では「結果論だが、訪問から救出までの約12時間が持つ医学的意味は小さくない」と、児相職員らが訪問時に異変に気づけなかったことで、弟の症状が悪化した可能性を示唆している。ただ、なぜ弟の安全を直接確認せずにその場を離れたのか、などの詳しい分析までは書かれていない。

 弟は今、12歳になった。障害児施設で寝たきりの生活を送っている。

■兆候つかんでも確認不十分

 死亡や重体など重大な児童虐待187事例について、全国の自治体が09年4月~16年9月に作成した検証報告書を朝日新聞が集め、専門家の助言を受けながら分析した。報告書の多くは公表されているが、非公表のものは情報公開請求などで取り寄せた。

 その結果、自治体や児相などが事前に虐待の兆候をつかんでいたケースが144件あり、その4割超の64件で「家庭訪問したのに子どもに会っていない」「電話だけで訪問せず」など、虐待を受けていないかどうかの確認の不十分さが指摘されていた。

 連携不足も指摘されている。自治体内で生活保護担当の職員は虐待の当事者の親子に会っていたのに虐待担当は会えていなかったり、虐待のリスクが転居先の自治体に伝わらなかったりと、行政内の連携不足は全体(187件)のうち114件にのぼった。

 病院や学校、幼稚園などが子どものあざなどに気づいていたのに、県などが管轄する児童相談所に連絡がないなど、関係機関どうしの連携不足の指摘も全体のうち72件あった。

 「児相の専門性が乏しかった」「マンパワー不足」などの指摘も目立った。

 187事例で死亡した被害児童は少なくとも172人(年齢不明の11人含む)で、0~3歳が97人と全体の半数強を占めた。児童虐待防止法では「心身に著しく重大な被害を受けた事例の分析」を自治体に求めている。厚生労働省の統計では09~13年度に虐待で亡くなった子どもは444人で、死亡事例だけみても半数超が検証されていない。

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