[PR]

◇自己負担20万円というケアプランの案がケアマネジャー(ケアマネ)から送られてきた

◇実家で母がよく通りそうなところに手すりをつけた

◇ケアマネと電話で話し、ケアプランを作り直すように言った

 母の退院後に備えて開いたサービス担当者会議は、訪問看護ステーションの所長さんが取り仕切って終わった。それが面白くなかったのかどうかはわからないが、ケアマネの青山さんは機嫌を損ねて帰ってしまった。

 その翌日、青山さんからFAXで送られてきた新しいケアプランの案には、要介護2で月々の自己負担が20万円、という信じられない金額が書かれていた。聞いたことのない介護老人保健施設に、月曜から金曜まで毎日デイサービスに通い、朝から夕方まで滞在して、そこで入浴やリハビリを受ける設定になっていた。

 介護保険のサービスを利用した場合、要介護度別に支給限度額が決められている。地域によって違うが、要介護2では19万6千円ほど。このうち自己負担額は、一定の所得以上だと2割になるが、母は1割だ。

 新しいケアプランでは、この支給限度額のほぼ倍にあたるサービスを利用する設定になっていた。このため、通常1割の自己負担に限度額を超えた分が加わり、自己負担の総額が20万円に膨れあがっていた。(※支給限度額の説明は「介護初心者の挑戦:11」をご参照ください)

 私たちはこんなことを頼んでもいないし、考えたこともない。FAXに気づいてからすぐに青山さんの携帯電話にかけたが、彼女は電話に出ず、留守番電話につながった。

 「あす朝9時以降に電話をください。かかってこなければ、私からかけます。とにかく、ケアプランの内容が理解できません。細かいことは明日言いますので、修正してください」

 我ながら切り口上だとは思ったが、留守番電話にメッセージを残した。これからどうなるのだろう。母の退院後のことが不安になり、その晩はあまり眠れなかった。

 翌朝、土曜日の朝9時に施工業者が実家を訪ねてきた。私は8時前に実家に着き、部屋を片付けて待っていた。弟の妻の恵さんも来て、片付けを手伝ってくれた。

 恵さんにケアプランのことを話すと、「20万円って何ですか?!」と目を丸くされた。

 「おかあさんは、リハビリでだいぶ回復していますよね。足以外は問題ないですし、日常生活のことはだいたいできると思いますよ。昨日、私が病室に行ったときは、一人でパジャマのズボンをはき替えていました。おかあさんは、デイサービスに通うよりも、自宅で過ごしたいんじゃないでしょうか」と恵さんが言う。

 確かに最近の母は、退院が近いと考えているのか、リハビリだけでなく、着替えやトイレといった普段の動作を一人でやろうと頑張っている。そして、少しずつできることが増えてきている。毎日デイサービスに通うより、自宅で過ごし、家事や散歩をヘルパーさんに手伝ってもらう方がいいと、私も思う。

 午前10時を過ぎてもかかってこなかったので、私の方から青山さんに電話をすると、すぐつながった。

 「あ~、すみませ~ん。朝から1軒、訪問していたので。ケアプランのことですか?」。青山さんはのんびりした口調だった。

 「そうです。自己負担20万円なんてあり得ません。月曜から金曜までの日中、介護老人保健施設に通う設定になっていますが、その必要はありません。散歩や買い物、家事の手伝いで毎日1時間ぐらいヘルパーさんに来てもらって、訪問看護師さんに週1~2回、入浴介助や診察をしてもらう、という方向で作り直してください」

 「あ、そうなんですか~。それでいいんですか~?」

 気の抜けたような青山さんの言葉に、ムッとした。

 「青山さん、ご自身で病室にいらして、母の様子をご覧になったらいかがですか。前に青山さんがいらしたときより、自分でできることが増えています。母はできるだけ自宅で過ごすことが希望なんです。それと、おたくの事業所の関連なのかどうかは知りませんけど、聞いたことのない施設に通わせることは、私たちはしませんから。先日のサービス担当者会議に出ていただいた、訪問看護ステーションの所長さんと、ヘルパーの事業所に相談してスケジュールを決めてください。他のところは絶対ダメですからね」

 私が少しきつく言うと、青山さんも怒ったような口調になった。

 「そんな責めるような言い方をしなくてもいいじゃないですか。ケアプラン、作り直しますよ。来週送りますから。それでいいんでしょ」

 私はもっと大きな声を出しそうになったが、目の前で電話を聞いていた恵さんに止められた。電話を切ってから、恵さんに言われた。

 「おかあさんが退院したら、ケアマネを変えることを考えましょう。でも、いま変えると、おかあさんの退院に間に合わないかもしれないですよ。少しの我慢です。仕方がありません」

 確かに、今回はこのままやってもらうしかなさそうだ。

 私たちがこんなやりとりをしている間も、手すりはひとつひとつ丁寧に取り付けられていた。全部で10本余り。お昼前にはつけ終わった。

 「確認してください」と業者に言われ、私と恵さんが1本ずつ、実際に手を置いてみたり体重をかけてみたりして、しっかり付いていることを確認した。使い勝手も良さそうだ。

     ◇

 初めての介護、どんなことに注意を払えばいいのでしょうか。みなさんはどんな経験をしましたか? アドバイスやご意見を募集しています。

 ご投稿いただく際は、お名前をご明記のうえ、下記のアドレスにメールでお送りください。文字数の制限や締め切りはありません。ご投稿を紹介させていただくこともありますので、匿名希望の方はペンネームをお書き添えください。

 朝日新聞デジタル編集部「介護初心者の挑戦」係

 kaigotoukou@asahi.comメールする