韓国ロッテグループが秘密の政治工作用資金を不正に捻出したとされる疑惑で、ソウル中央地方検察庁は19日、創業者の辛格浩(シンギョクホ)総括会長(日本名・重光武雄)や長男の辛東主(シンドンジュ)氏(同・重光宏之)、次男の辛東彬(シンドンビン)会長(同・重光昭夫)らを在宅起訴したとする捜査結果を発表した。

 同地検によれば、辛格浩氏はグループ内企業の株式を不正に譲渡したなどとして横領や脱税などの罪に、辛東主氏は実態のない役職で不正な報酬を受け取ったとして横領の罪に、辛東彬氏はグループ内企業間の不正取引などによる横領や背任の罪に問われた。それぞれ裁判に臨むことになる。

 このほか、創業家では、辛格浩氏の長女の辛英子(シンヨンジャ)氏が横領の罪などで逮捕・起訴されたほか、辛格浩氏と事実婚関係にある徐美敬(ソミギョン)氏が脱税などの罪で在宅起訴された。

 同地検は創業家を含む同グループ関係者22人とロッテ建設、ロッテホームショッピングの2法人を起訴し、うち逮捕者が辛英子氏ら6人に上ったと発表。犯罪に該当する金額は3755億ウォン(約350億円)で、うち1462億ウォンを創業家が横領したと性格づけた。

 同地検は捜査の意義について「経営権譲渡のなかで、創業家による会社資金の横領や系列社の不正支援、脱税、秘密資金捻出など全体的な疑惑を究明した」と主張。検察関係者は「創業家の疑惑を明らかにし、断罪したことは社会的に相当な意味がある」とした。また、辛東彬氏の逮捕状を請求したが、裁判所に棄却されたことに関し、「(逮捕)令状発布の可否で(捜査の成否を)判断するのは適切ではない」とも語った。

 だが、政界関係者の事情聴取は行われなかった模様だ。検察は、秘密資金の用途は経営監査をめぐる会計法人への顧問料などとしたが、政界工作の活動については触れなかった。検察関係者は「(辛東彬氏らの)身柄確保によってロビー活動への追加捜査も可能だったが、残念だ」と述べた。

 専門家の間では、系列会社同士の経営支援や創業一族への給与支給などを刑事犯罪に問うのは無理があるという指摘も出ている。

 日韓にまたがって活動するロッテでは、日本のロッテホールディングス(HD)の経営をめぐって辛東主氏と辛東彬氏が対立。辛東主氏が昨年1月にHD副会長を解任された。兄の辛東主氏が弟の辛東彬氏らの経営責任を問う訴訟を次々に提起し、「お家騒動」に発展した。検察は、この過程で韓国ロッテの内部情報が寄せられたことが、今回の捜査の契機の一つになったとされる。

 今回の捜査で、ロッテブランドは大きく傷ついた。

 シンクタンクの韓国2万企業研究所によれば、2015年、韓国ロッテグループ系列91社の総売上高は68兆3千億ウォン(約6兆2千億円)で、前年の約66兆7千億ウォンを上回った。

 だが、民間の調査会社、韓国ブランドストックによれば、今年第3四半期のロッテグループ各社のイメージは軒並み下落。ブランドランキングで第2四半期に8位だったロッテ百貨店は16位まで順位を下げた。韓国ロッテグループが計画していたホテルロッテの株式上場も無期限延期になった。

 韓国ロッテグループは19日、検察の発表を受けて「今後、裁判過程で誠実に弁明したい。ロッテが社会と国家経済のため、どのような努力をすべきか誠実に考えてきた。今後、良い企業を作るため、引き続き努力したい」とするコメントを発表した。辛格浩、辛東彬両氏は現職にとどまる見通しだ。(ソウル=牧野愛博)

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 日本のロッテホールディングスは19日、副会長を務める重光昭夫氏と名誉会長の重光武雄氏の2人の取締役が韓国で在宅起訴されたことを受けて、「非常に残念なことと考えている。起訴状の内容を確認でき次第、取締役会で今後の対応を協議する」(広報室)とのコメントを出した。