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 中学校の制服を通し、今の日本の社会が抱える様々な課題を考えてきました。最後に、特に大きな不満が寄せられた「価格」について、各地で実施されている改善への試みを、きょうと明日に分けて見ていきます。まずは、制服を決めてから買うまでの仕組みを変える試みです。一つひとつの学校以外の力が、そこには加わっています。

 制服の価格を抑えたり一部業者の独占状態を改善したり。行政主導で仕組みを変えた例があります。

■入札で価格を決定

 福岡県春日市は2000年度、保護者らの「制服が高い」という声を受け、制服価格を入札して決める方法を始めました。市内の中学6校のうち、独自の制服がある4校の19品目が対象。市内外の7業者が3年ごとに入札で価格を競うそうです。

 市教育委員会によると、ある中学校の男子冬服(ブレザー、ズボン、ネクタイのセット)の場合、初年度3万1600円だった落札額は少しずつ下がり、4回目の入札(09年度)で初回の2割安の2万5980円になりました。ただ、15年度は布代の値上がりなどを背景に、2万7790円に上がりました。業者側には「人件費を削らないと値下げは難しい」「お下がりなどもあるので新入生全員に売れるわけでもなく、単価を決めにくい」といった声もあるそうです。

 市教委の担当者は「価格的には安定している。品質を落とさずに制服を提供する手段として、今後も入札を続けるかどうかは検討が必要」と話しています。

■参入増狙い規格公表

 群馬県教委は04年2月、県立高校に通知を出しました。どの業者でも製造や販売に参入できるよう、制服のデザインや規格を詳しく書面で公表し、業者を原則指定せず、販売価格の決定に学校が関わらないことなどが盛り込まれています。

 当時、指定業者から「手数料」を受け取っていた高校があったほか、4割の高校が指定製造業者を1社に限定。8割が販売店を指定し、3割が価格決定に関わっていました。通知が出て、制服価格や取扱業者はどう変化したのでしょうか。

 県内のある製造・販売業者は「多様な種類・サイズを入学前の短期間で作らなければならず、販売後もきめ細かい対応が求められるといった特殊性がある。業者指定を禁じたからといって、誰でも参入できる甘い世界ではない。業者数や価格も大きく変わっていない」と言います。別の販売業者は「大手メーカーの力が強く、製造への参入はなかなか増えない。だが、販売業者数は劇的に増え、価格競争が起きた。通知が出る前と比べ、20%ほど安く売る店も出てきた」と言います。

 ある県立高の場合、制服販売店は5店あり、男子の詰め襟、ズボン、長袖ワイシャツの3点で約4万2千~約4万5千円と、店によって3千円ほどの差があるそうです。別の高校では、通知以前の指定店は3店でしたが、現在の取扱店は12店。男子のブレザー・ズボンの価格は、通知前の約4万500円から、約3万8千円に下がったといいます。ただし、「学区制が廃止され全県一区になったことや、物価の影響もあるのでは」ということでした。

 一方、女子制服のみ大手デパートがデザインから製造・販売まで手がけている高校は「複数業者の提案のうち、保護者の負担が重くならないことを重視して選んだが、事実上は『指定業者』となっている」そうです。(菅野雄介、三島あずさ)

■都立学校にルール示す通知

 東京都教委は14年12月、業者を選ぶ際の具体的なルールを示した通知を都立学校に送りました。

 制服の新調以降、製造業者を変えない学校があると保護者らから声が寄せられたためです。調べると、同様の契約は他校にもありました。

 通知では「製造業者が1社の独占状態となり、数社の販売業者の寡占状態となっている」「都民や保護者の信頼を大きく損ねる」とし、「適正」な契約形態を示しました。

 まず、必ず製造業者を選んだ後に販売業者を選ぶという手順を求めました。販売店を先に選ぶと、店に出入りする製造業者に有利に働くそうです。制服の仕様は公開、業者を限定するような特殊技術や素材は使わないよう求めました。それまで「不適正」な契約だった場合、約4カ月後の15年3月末までに見直すよう指示、不適正な契約はすべて改まったそうです。

 都教委の高校教育課の担当者は、「制服の有無やデザインなどは学校の判断に任せているが、保護者負担の軽減を前提に、制服の契約も公費で定められている規則に従い、公明正大にやるべきだという考えにたっている」と話しています。(錦光山雅子

■市内でデザイン統一

 京都府福知山市の中学校は、全9校で制服デザインを統一しています。00年、同市中学校長会が音頭を取り、一斉にブレザー服に切り替えました。「発注量を増やし安価にしたい」というのが統一の理由だそうです。

 上着は紺のブレザー服、スカートとズボンは紺が基調のチェック柄で統一しています。

 10年目に製造業者を見直し、その後5年ごとに見直しています。直近の15年のコンペでは2業者が参加、反射材入り、防水撥水(はっすい)、抗菌加工など、素材や価格に差を付けた制服を3種類提案してもらい、各校の代表らの判断で選び、契約しました。標準クラスの価格は冬服上下で約2万9千円。選んだ素材によって学校間の価格差は数百円から数千円といいます。地元の販売業者は「学校別のエンブレムもないのでお下がりも手に入りやすい」と言います。

■購入費用の貸し付けも

 栃木県日光市は15年1月から、経済的に困窮している世帯を対象に、制服を始め、入学前にそろえておくものの購入費用を無利子で貸し付ける制度を始めました。

 借りられる額は小学生で5万円まで、中学生は10万円まで。入学説明会で案内チラシを配り、希望者に1月下旬から3月上旬の間に貸し付ける。市教委によると、今年度入学した中学1年生5人が借りました。

 貸付日から2カ月据え置いた後、10カ月以内に返し終えるのが原則。学期末などに支給される就学援助の一部を返済に回すこともできます。「家庭の事情で、返済期間を在学期間中に延ばす相談にも応じている」と、市教委。今年度当初予算では、来年度入学する小中学生各5人分の75万円を確保しました。

■アンケートに寄せられた意見は

 費用負担をどう減らすか、そもそも制服のあり方とは。アンケートに寄せられた意見です。

【お金の負担】

●「成長期の子供ですからいたみ具合やサイズの問題はあると思いますが、レンタルの仕組みを取り入れるのも一つの方法ではないでしょうか。すでに企業の制服貸与の仕組みで商業ベースで展開されています。サイズ変更による交換は無料、いたみによる交換は回数を定めて無料など、工夫によってコストを平均化することは可能だと思います。レンタル料は月に1千~2千円に設定して、困窮世帯には行政から補助(現行の就学支援制度等)を行えば、費用の平均化が図れるのではないでしょうか」(熊本県・40代)

●「うちの子供の学校では、制服リサイクルは行われていますし、学用品も家にある人はそれでも可となっています。地域間、学校間で情報のやり取りってしないんでしょうかね? 『制服代はこれくらいかかる』という心づもりができるよう、小さい子のいる家庭に情報が届くといいのかなと思います」(東京都・40代)

●「制服は必要だと思うが、現在のように高額な制服を半強制的に購入させられるのはおかしいと思う。しかし制服無料化には反対。誰がその財源を負担するのでしょう?」(東京都・40代)

●「制服のリサイクルは、反対です。3年間毎日着用すればいたむし、新品な物とも差は歴然です。それにより、差別が生まれます。小学校の延長で私服で良いと思います」(千葉県・40代)

●「制服廃止はつらくなる方が多くなる気がなんとなくします。義務教育中のものなので、基本1着目の制服、かばん、体操着等は教科書と同じ扱いにして無償配布がいいのではないかと思います」(宮城県・40代)

【そもそも】

●「デザイン、色みをある程度パターン化し、低価格の量販店やネットでも取り扱ってもらえれば、もう少し安く購入できるようになるのでは? サイズが変わっても対応しやすいと思います」(栃木県・40代)

●「地元の公立中学は、制服はありますが着用は自由です。校則は『TPOにあった服装を……』と一つ。体操服や部活用のスポーツウェア、自由に私服を選んでいます。入学式や卒業式は地域で巡っているお下がりの制服を入手して着たり、手頃に購入できるブレザーやスラックス、シャツなどを着たり、ウチの長男は父親の昔の紺のブレザーを直して着ました」(神奈川県・40代)

●「サービス業向け制服のメーカーで働いていました。企業の制服は、お金を出すのと形を決めるところは同じとなりますが、学校制服はお金を出すのは生徒の家庭、形を決めるのは学校であるが故に、不満がたまっているのではないかという印象を持ちました。お金を出す人が何か決められる仕組みであることが必要と思います」(京都府・30代)

●「ジャージーと体操着だけでも構わないと思う。性的マイノリティーの子どもたちもスカートかズボン、どちらかを選ぶのに迷いがあるかもしれない。男女同デザイン、ユニセックスなジャージー、そんな選択肢もあると思う」(神奈川県・30代)

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