[PR]

◇母は要介護2と認定された

◇新しいケアプランを作成し、実家の準備が整った

◇母は退院し、再び家で暮らし始めた

 ケアマネジャー(ケアマネ)が中野さんに交代してまもなく、母は新たに要介護2と認定されたと連絡を受けた。すぐ中野さんにお願いして、ケアプランを考えてもらった。

 (※1単位10円、自己負担1割として計算しています。「1単位」の説明は、「訪問介護、どんなサービスを受けられる?(介護初心者の挑戦:8)http://www.asahi.com/articles/ASJ4G5R94J4GUEHF00W.html」をご参照ください)

 まず、訪問介護は、45分以上の生活援助を月・水・金曜日に週3回利用する。1カ月が4週として計12回。1回2250円で計2万7千円になる。木曜に1時間の入浴介助も頼むと、1回3880円で月4回、計1万5520円が追加される。

 また、訪問看護は月曜と木曜に1時間ずつ。月曜は入浴介助、木曜は健康状態のチェックなどをしてもらう。1回8140円で月8回、計6万5120円だ。

 さらに、通所リハビリテーションに火・木曜日の週2回通う。3時間未満の利用で1回3980円、月8回で計3万1840円だ。

 以上の利用料は、合計で13万9480円。自己負担1割の場合、月額1万3948円を払うことになる。

 まずは、このケアプランで始めてみることにした。

 今月は残り1週間ほど。母は月末に退院できる見込みと聞いていたので、来月初めから新しいケアプランで介護保険サービスを利用できるよう、中野さんに手配してもらった。

 そして月末の木曜日、母は退院した。

 弟の誠は平日で仕事を休めなかったが、妻の恵さんが私と一緒に付き添ってくれた。

 右の大腿(だいたい)骨骨折で救急搬送されてから3カ月余り。最初に入院した病院では水を飲ませてもらえず、せん妄の症状が出たこともあった。家族で手を尽くして転院させ、意識が回復してから手術を受けた。なかなか歩くことができず、理学療法士に支えられて母は頑張った。そしてリハビリ病院での日々……。さまざまな場面を思い出して、私は涙が出た。

 母は、純粋に退院を喜んでいた。朝からニコニコと笑顔で、タクシーの中でもよくしゃべった。

 家に着くと、玄関のドアを開け、最初に新しい手すりが目に入ったらしい。じっと眺めていたが、やがて、「そうね。仕方ないのよね」と自分に言い聞かせるようにつぶやいた。

 寝室の介護ベッドに座った母は「悪くなさそうね」と言ったが、横にあるポータブルトイレを見て、けげんそうな表情をした。

 「何これ? 私、家のトイレに歩いて行けるから、いらないわよ。リハビリしたもの」と母。

 「でも、夜中に寝ぼけて転ぶと危ないから、試しに使ってみたら?」と薦めたが、母はかたくなに拒否した。

 「家のトイレを使えるうちはいらない。全く歩けなくなったり、夜中にトイレが間に合わなくなったりしたときに、改めて考えてちょうだい」

 ほかの手すりは気に入ったようで、手すりで体を支えながら、家の中を何度も何度も歩いていた。

 「おかあさん、うれしそうですねぇ」。恵さんも目を赤くしている。

 こうして母は、再び家で暮らし始めた。

 不要になったポータブルトイレは、一度も使われないまま、中野さんを介して介護用品レンタル業者に引き取られていった。

 母は、通所リハビリに行ったり、ヘルパーさんに来てもらったりしながら、それなりに楽しく日々を過ごしているようだ。

 私は仕事に忙殺される生活に戻ったが、週末は実家に帰り、母と一緒に過ごしている。平日は、実家の近くに住む恵さんが1日おきぐらいに母を訪ね、一緒に昼食をとったり、おしゃべりの相手になったりしてくれている。

 さらに、恵さんを追いかけて(?)、小学5年生になった長男の陸くんもときどき訪ねてくるようになった。

 「陸が顔を見せてくれるのよ。一緒にお茶を飲んでおしゃべりするの」と、母はうれしそうだ。

 母は、いろいろな物の置き場所を忘れ、ヘルパーさんのスケジュールや私たちとの約束もときどき忘れる。私と恵さんに全然違うことを言い、こちらが振り回されることも増えた。

 ときには理不尽なことも言われる。

 「毎日一緒にごはんを食べてくれないあんたは冷たい」と母に言われたときは、「私にだって生活がある。働かないと食べていけない」と私が言い返し、大げんかになった。

 それでも、口論できる元気が母にあるうちは、いいのかもしれない。いまは、そう思うことにしている。

 あと何年、母とともに過ごせるかわからない。介護の状況が変わる、次の局面はいつ、どんな形で訪れるのだろう。それまでの間、母に穏やかな日常を過ごしてもらいたい、と思う。

     ◇

 「介護初心者の挑戦」は、今回で終わります。最後までお読みいただきまして、ありがとうございました。

      ◇

 初めての介護、どんなことに注意を払えばいいのでしょうか。みなさんはどんな経験をしましたか? アドバイスやご意見を募集しています。

 ご投稿いただく際は、お名前をご明記のうえ、下記のアドレスにメールでお送りください。文字数の制限や締め切りはありません。ご投稿を紹介させていただくこともありますので、匿名希望の方はペンネームをお書き添えください。

 朝日新聞デジタル編集部「介護初心者の挑戦」係

 kaigotoukou@asahi.comメールする