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 アニメ映画「この世界の片隅に」(片渕須直監督)が11月12日から、全国の映画館で公開されます。漫画家・こうの史代さんが2007~09年に「漫画アクション」で連載した作品が映画になりました。作品に込めた思いを、こうのさんに聴きました。

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 【あらすじ】絵が得意な主人公の浦野すずは18歳だった昭和19(1944)年、広島市から20キロほど離れた呉に嫁ぐ。物不足のなか、工夫をして家事をするが、軍港だった呉は何度も空襲に襲われた。そして、20年8月6日には、広島に原爆が落とされる。それでも、大切なものを失ったすずたちは、たくましく生きていく。

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 広島市で生まれ育ちました。それなのに、高校生のころには、原爆や戦争の話が嫌いになっていました。どうしてだと思いますか?

 「二度と原爆の悲劇を繰り返してはいけない」という答えがもう用意されていて、何度も大人に言わされる。残酷なものを、みんなと一緒に見せられるのもいやでした。でも、いま振り返ると、子どものころに出会った原爆や戦争のお話は、大切な思い出となっています。

 編集者にすすめられて、原爆が落とされてから10年たったあとの日常を描いた「夕凪(ゆうなぎ)の街 桜の国」を発表しました。とても反響がありました。そして、読者に背中を押されるかたちで、戦争中の広島県呉市を主な舞台にした「この世界の片隅に」を描きました。日本には空襲の被害を受けた場所がたくさんあり、原爆だけでは語りきれないこともあると考えたのです。

 「この世界の片隅に」では、戦時中の普通の生活を見てほしいと思って、あえて穏やかな暮らしを描きました。ふつうの人たちが戦争に巻き込まれてしまう。二度と戻ってこない当たり前の日々が、どんなに尊いかを感じてほしい。原爆後、必死に生きた人たちへの感謝の気持ちも込めています。

 主人公のすずは空襲や原爆で大切なものを失いますが、生き抜いていきます。すずと同じ視点で原爆に向き合ってもらえたらいいですね。

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 こうの・ふみよ 1968年に広島市で生まれる。95年に漫画「街角花だより」でデビュー。「夕凪の街 桜の国」は2004年度の文化庁メディア芸術祭マンガ部門大賞を受賞。「この世界の片隅に」は09年度の優秀賞を受賞した。(聞き手・大隈崇)