[PR]

 人工知能(AI)の技術は、近年急速な進歩を遂げました。音声認識や画像認識などで身近になりつつあります。そんな中、この8月、ちょっと面白い動きがありました。AIが本を書いたのです。AIが「本を書く」とはどういうことなのでしょうか? 「賢人降臨」と名付けられた本を書いたAI「零」を開発した、クエリーアイ株式会社・社長の水野政司さん(写真1)に話を聞きました。(ライター・西田宗千佳)

■著作から学習、「その人の発想」をAIが文章化

 8月24日に一冊の電子書籍が発売されました。タイトルは「賢人降臨」。

 「若者もあり、あるいは才智(さいち)逞(たくま)しゅうして役人となり商人となりて天下を動かす者もあり……」という書き出しから始まる、少々古めかしい文語調で書かれた本ですが、決して古い本ではありません。執筆されたのは2016年8月。古いどころか、バリバリの新刊です(画像2、3)。

 著者は「零」。ペンネームではありません。それどころか人間でさえありません。零はAIです。福沢諭吉と新渡戸稲造の著書から学び、全ての文章を零だけが書きました。賢人降臨のうち、人が書いているのは序文とあとがきだけ。それ以外は、一文字たりとも人の手による編集が入っていません。賢人降臨を読むと、その完成度に驚かされます。よく読むと、文章のつながりがおかしいところ、単語の使い方が正しくないところが見受けられます。しかし、普通に文章になっていることに驚かされます。また何より、賢人降臨を読むと、いかにも福沢諭吉や新渡戸稲造が言いそうなことを語っているのです。賢人降臨は、各章のタイトルになっていること、例えば「若者とは」「学問とは」「世界とは」といった事象を、零に問いとして与え、その結果が文章になって出てくる……という形でつくられています。

 すなわち、福沢諭吉や新渡戸稲造を学んだAIが、彼らの発想を基に文章をつくっていると言えます。極端なようですが、零は福沢諭吉や新渡戸稲造が書いた文章から彼らの発想法を学び、彼らに代わって問いに答えることができる存在になったのです。

■AIからの文章作成は「論文」が効果的

 クエリーアイの水野社長は「やってみたら、一発であの文章が出てきた。その驚きをみなさんと共有したくて『賢人降臨』を作った」と話します。

 クエリーアイはもともと、スマートフォン用アプリの販売統計を分析する会社でした。スマホアプリに関する広告の効果を測定し、どうすれば効率的に運用できるかを分析するために使っていたのが「ニューラルネットワーク」というAIの技術です。水野さんは30年前、学生時代にニューラルネットワークを専門として学んでいました。その技術を新しいビジネスに応用したのです。現在は、過去のアプリ売り上げランキングとツイッターの書き込み情報から、「1時間後のアプリの売り上げ」を誤差7%の範囲で予測できるようになっています。

 同社が次のビジネスとして狙うのが、AIによる「文章作成」。ネット上には、他で書かれたニュースを使い、文章を書き換えて紹介する「バイラルサイト」「まとめサイト」があります。こうしたウェブサイトでは多数の記事が必要なのですが、問題はコストです。創作性の低いまとめ記事をつくっても、その書き手に高い報酬を支払うことはできません。ですから、AIを使って文章を量産することができれば、こうしたサイトの運営コストをさらに下げ、利益率を高くすることができます。

 その研究段階として、死後50年が経過して著作権がなくなり、無償で利用が可能になった福沢諭吉・新渡戸稲造の文章を使ってテストしてみた……。これが今回の試みでした。2016年8月初めのことです。「ある程度予想はしていたが、いきなりここまできちんとした文章が出てくるとは思わなかった」と水野さんは言います。

 専門用語を使っていえば、水野さんが用いたのは、ニューラルネットワークの中でも「リカレント・ニューラルネットワーク(RNN)」と呼ばれる手法です。自らが構築したRNNを使ったAIに、著作権フリーの電子図書館「青空文庫」で公開されている福沢諭吉の文章、「学問のすゝめ」などを読み込ませて学習させたわけです。

 学習させる対象として「学問のすゝめ」などを使ったことには、主に二つの理由があります。

 まず、AIが扱うには、論文や…

有料会員限定記事こちらは有料会員限定記事です。有料会員になると続きをお読みいただけます。

有料会員限定記事こちらは有料会員限定記事です。有料会員になると続きをお読みいただけます。

有料会員限定記事こちらは有料会員限定記事です。有料会員になると続きをお読みいただけます。

有料会員限定記事こちらは有料会員限定記事です。有料会員になると続きをお読みいただけます。

有料会員に登録すると全ての記事が読み放題です。

初月無料につき月初のお申し込みがお得

980円で月300本まで読めるシンプルコースはこちら

こんなニュースも