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 金の密輸が横行している。税関によると、昨年から今年にかけての1年間で、九州・山口での摘発件数は過去最多を記録。金相場の高騰に加え、売却時に消費税分が戻ってくる日本特有の制度が影響しているとみられる。暴力団が関与する例もある。

 昨年12月の那覇空港。マカオから着いたプライベートジェット「ガルフストリームG200」に税関職員が乗り込んだ。定員8人の機内には男が2人。貨物室に大型スーツケース四つを残して降りようとしていた。不審に思った税関職員が沖縄県警とともに検査。ケースからは1キロの金の延べ棒112本が見つかった。4億8千万円分に相当する。

 税関は密輸目的と判断し、沖縄県警などが指定暴力団稲川会系の組幹部2人やジェット機の運航手配会社社長ら計7人を関税法違反などの容疑で逮捕。捜査関係者によると、組幹部らはマカオで購入した金を税関を通さず密輸し、消費税3800万円の支払いを免れようとしたという。マカオへ数十回の渡航歴があり、常習的に持ち込んでいた可能性があるとみる。

 財務省によると、2015事務年度(15年7月~16年6月)の金密輸事件は全国で294件と過去最多を2年連続で更新した。このうち山口と福岡、大分など九州東部を管轄する門司税関と、沖縄地区税関は計34件で脱税額は計約1億1千万円に上った。九州西部が管轄の長崎税関での摘発はなかった。

 金の価格は変動するものの世界共通。多くの国は非課税だが、日本では国内に持ち込んだ時に税関で消費税8%を納める必要がある。一方、売却する際には8%を上乗せした金額で買い取ってもらえる。海外で買った金を密輸入し、国内で売れば、8%分が「利益」になるからくりだ。

 金の密輸は消費税が8%に上がった14年4月以降に急増。13事務年度に8件だった全国の摘発件数は14事務年度、177件に急増した。金の買い取り価格は1グラムあたり4500円前後(12月20日現在)で10年前の約3倍。増税と価格高騰で密輸のうまみが大きくなっている。

 税関関係者は「覚醒剤などと違い、所持自体は犯罪にならない。リスクを避けたい暴力団などが大量に密輸している」と指摘する。

 金をめぐっては今年7月、福岡市博多区で警察官を装った男らが職務質問のふりをして金塊約160キロ(6億円相当)を盗む事件が発生。男らは「密輸品なのは分かっている」などと言って声をかけたといい、福岡県警が捜査している。

 消費税が19年10月に10%へ引き上げられると、密輸の利ざやがさらに増える。財務省は各税関に取り締まりの強化を求めている。(井上怜)