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 東日本大震災の津波被災で不通となっていたJR常磐線の浜吉田(宮城県亘理町)―相馬(福島県相馬市)間が10日、5年9カ月ぶりに再開した。これで宮城県の沿岸路線はすべて開通した。岩手、福島両県にはなお不通区間が残り、沿岸の全線がつながるのは2020年になる見込みだ。

 「山元町の未来に向かって出発進行!」。午前5時42分、駅長の合図とともに宮城県山元町の山下駅から仙台駅に向かう真新しい4両編成が滑り出した。再開を待ちわびた約150人が一番列車に乗り込んだ。

 福島県新地町の新地駅前の式典には安倍晋三首相が参加し、「この駅は新地町の復興のシンボルだ」とあいさつした。

 「やっとこの日が来た」と話すのは地元の斎藤慶治さん(60)。津波で住宅は土台だけになり、新しい山下駅近くに新居を構えた。「ここからが本当のスタート。活気ある街になってほしい」と、車窓からの街並みを見つめた。

 再開まで時間を要したのは、津波に備えて鉄路を内陸に移す大がかりな工事をしたためだ。約400億円をかけて山下、坂元(宮城県山元町)、新地(福島県新地町)の3駅を含む延長14・6キロを最大1・1キロ移設し、一部を高架化した。3駅周辺には沿岸被災者の集団移転によって新たな街ができつつあり、町は人口流出に歯止めがかかることを期待する。

 一方、宮城県北部の気仙沼線は2012年から、線路の一部をバス専用道として活用するBRT(バス高速輸送)を導入している。

 岩手県を走るJR山田線の宮古(宮古市)―釜石(釜石市)間の55・4キロもBRTを提案されたが、県や沿岸市町村は鉄道での復旧を強く要望。昨年2月、JRが復旧させた後で第三セクターの三陸鉄道に移管することで合意した。再開は18年度の見通しだ。

 福島県は、東京電力福島第一原発周辺のJR常磐線小高(南相馬市)―竜田(楢葉町)間の36・6キロが不通のままだ。放射線量が高い「帰還困難区域」では、汚染された枕木などを撤去し、レールを敷き直す大がかりな除染が必要で、20年3月までの順次再開をめざしている。

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 福島県新地町の住民は、震災前から常磐線を使い、通学や買い物で仙台に通う人が多かった。この日、新地駅で仙台行きの列車を待っていた地方公務員の浜野美樹子さん(40)は「この日をずっと待っていた。今日はショッピング。何を買うかはこれから決めます」と話した。

 駅舎は約300メートル内陸側に移設した。主に西側の約24ヘクタールを区画整理して、来年度末までにホテルや温浴施設、複合商業施設、災害公営住宅などを整備する計画だ。周辺一帯の敷地は平均4メートル近くかさ上げし、「津波に強い防災まちづくり」をめざす。災害時の避難道路と立体交差するように鉄路は高架橋化した。

 加藤憲郎町長は「津波で駅舎も列車も線路も流された中からの再出発だったが、用地提供に応じてくれた地権者を始め、町民一丸の協力で、復興は予想以上に早く進んだ」と喜んだ。(本田雅和)