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 日本で働いて暮らす外国人が増えています。政府は移民を認めていませんが、国際的にみれば、移民同様の存在です。建前と本音を使いわける政策が続くなか、弊害も出ています。受け入れの是非を正面から議論するときが、すぐそこに来ているのかもしれません。

すでに不可欠な労働力 上林千恵子さん(法政大学教授)

 日本にはいま、約230万人の外国人が暮らしています。3年前から約25万人増え、人口の約1・8%に上ります。経済協力開発機構(OECD)の統計上の定義では、国内に1年以上滞在する人は「移民」です。呼び方の問題は別としても、すでに外国人は日本に不可欠な労働力になっています。

 それなのに、働き手として平等に扱われなかったり、本人や家族が十分な日本語教育を受けられず社会からドロップアウトしてしまったりする問題が指摘されています。「単純労働の外国人は受け入れない」という建前を国が守っているため、定住政策の必要性が正面から議論されることがほとんどなく受け入れが広がる、というグレーな状態が続いてきました。

 外国人労働がクローズアップされたのは1980年代です。経済成長の一方、農村からの出稼ぎが減り、人手不足になった。観光ビザで入国した外国人の不法就労が目立ち始めました。移民必要論もありましたが、欧米の受け入れ国で社会が分断された実態などから、慎重論が強いままでした。

 そこで90年の出入国管理法改正で日系人を受け入れたほか、途上国への技術移転という名目で、就業は禁じながらも1年限定で一定の範囲の仕事で「研修」できる、「研修生」の制度も整備されました。93年には、在留期間を2年に延ばす代わりに転職の自由をなくした、いまの技能実習制度ができました。もっと単純労働者をという産業界の本音と、国の建前がせめぎ合い、「現状放置よりまし」な政策になったのでしょう。

 その後は、対象業種や期間の拡大など、少しずつ制度の手直しを繰り返してきました。昔は、1年目は最低賃金に満たない手当でもよく、仕事は大目に見たり、一緒に旅行したりと家族的なつきあいもありました。でも、2010年に1年目から最低賃金が適用されるようになると、働き手としての保護が進んだ一方、賃金に見合った働きを厳しく求められるなど、ドライな関係に変わっています。

 課題は山積みです。住み込みやサービス残業には人権や違法労働の問題が指摘され、他社に不法就労させるケースも珍しくありません。転職する自由はなく、日本に来るために母国で借金をしているから、嫌でもやめられない。

 そんな状態のまま、大手企業も実習生の活用を広げており、さらなる対象業種の拡大が見込まれています。最近の高度外国人材や留学生の受け入れ拡大も、労働力確保の面が否めないと思います。

 日本で暮らす外国人は、10年以上の在留などで永住権を持つ人、日系人など更新できる5年以下の定住権を持つ人、一部の仕事が対象の就労ビザを持つ人などがいます。さらに、その家族、留学生、実習生など在留資格は色々です。

 ここ十数年は、外国人が多く住む自治体などが「もっと受け入れ制度や定住政策を整えるべきだ」と国に提言をし続けてきました。でも国の政治家は、票になりにくく財政も厳しいなか、簡単には動きません。もともと自国民ではない人に、年金などの社会保障の権利をどこまで認めるかは解がない問題で、社会の合意が必要です。私たち自身が、外国人に頼らないと社会が回らない現実をもっと知り、認める必要があるでしょう。

 定住政策は急ぐべきですが、受け入れ制度は今後も少しずつ変えていくしかないかもしれません。正面から「移民を受け入れよう」などと取り組むと、かえって反発が大きくなるジレンマがあるからです。まずは昨秋に成立した技能実習適正化法で、受け入れ先の監督強化と受け入れ拡大がどう進むか、見極めたいと思います。(聞き手・吉川啓一郎)

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