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 福島県広野町の高野病院敷地内の院長宅で先月30日夜にあった火災で、県警は3日、現場から見つかった遺体は高野英男院長(81)だったと発表した。同病院は同町を含む双葉郡で唯一入院が可能だが、常勤医は高野さんだけだった。遠藤智町長らは同日、記者会見を開き、国や県に常勤医を探す支援を求めた。

 広野町は東京電力福島第一原発から20~30キロの距離にある。高野病院は、原発事故後も医師らが避難せずに入院医療を続けてきたことで知られる。内科、精神科、神経内科、消化器内科の4診療科があり、ベッド数は118。先月31日時点で102人が入院中だ。病院関係者によると、高野さんは「症例を研究し、患者さんを診ることが何より幸せという人だった」という。

 町によると、3日までは非常勤の医師が診療した。その後は、約60キロ離れた南相馬市に協力を求め、医師の派遣が決まったという。南相馬市立総合病院の医師らは「高野病院を支援する会」を立ち上げ、ボランティアで応援に入る医師二十数人を確保した。その中には、千葉や静岡、長野各県の医師もいるという。

 広野町には高野病院のほかに医院が一つあるが、町外の医師も含め、高野病院の存続に必要な常勤医は見つかっていない。遠藤町長は会見で「双葉郡の医療の崩壊を防ぎたい。院長の意思に、行政として応えなければならない」、同席した相馬中央病院(福島県相馬市)の坪倉正治医師(34)は「高野院長というスーパーマンで成り立ってきた病院。簡単に代わりは見つからない」と話した。

 一方、高野病院はホームページに、院長の娘である高野己保(みお)理事長の名前で「(院長は)福島第一原子力発電所事故以降は双葉郡にたった一つ残った医療機関として、まさに身を削るように地域医療の火を消してはいけないと、日々奮闘してまいりました」「『どんな時でも、自分の出来ることを粛々と行う』、この言葉を忘れずに、院長の意志を受け継ぎ、職員一丸となり、これからも地域の医療を守っていく所存です」との談話を掲載した。(茶井祐輝、永野真奈)