【動画】声優の上坂すみれさんから受験生へ=瀬戸口翼撮影

 人気アニメ「艦隊これくしょん―艦これ―」などに出演する声優で、歌手としても活躍する上坂すみれさん(25)。高校生の時に旧ソ連の国歌に魅せられ、公募制の推薦入試で上智大のロシア語学科に進みました。大学2年生で声優の仕事を始め、4年生の時にはモスクワで行われた日本ポップカルチャーの祭典に出演。高校時代の選択や大学での学びが、活動の幅を広げています。

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 小学生から今の事務所に入っていましたが、高校生までは学校生活が優先でした。でも、部活動に熱中していたわけではないので、学校以外では、小説や漫画を読んだり、インターネットをしたり。小さい頃から読書は好きで、小学生の時は「青い鳥文庫」、中学生では江戸川乱歩や夢野久作の作品をよく読んでいました。

■ソ連の国歌に衝撃

 中学生になると、サブカルチャーに熱中するようになって、ミリタリーにはまりました。ネットで軍歌をよく聴いていたので、その流れで高校1年生の時に、ソ連の国歌を聴いたんです。

 その国歌に衝撃を受けて。それまでロシア語に触れたことはなかったけど、すごくきれいな言葉だなと思いました。そこから歌詞を調べていくと、国策的な音楽だということが分かってさらにビックリして。「こういう国歌がある国って、どういう所なんだろう」と興味がわきました。

 好きになったら、どんどん知りたくなるんです。学校の図書室で色々探すと、「ロシアを知る事典」という大きな事典が見つかって、教科書には載っていないロシア史を知りました。ソ連初期のサイレント映画のポスターがアバンギャルドで格好良くて、そのポスター展にも行ったり、ドストエフスキーやチェーホフなどのロシア文学も読んだりしました。

■大学でもロシアを学びたい

 大学でも、ロシアを勉強したいなと思っていたんですけど、専門的に学べるとは思っていなくて。文学部の歴史学科に進めばロシア史も勉強できるかなぐらいに思っていました。そうしたら、3年生の夏の進路相談で担任の先生が、ロシア語学科がある大学を薦めてくれたんです。オープンキャンパスに行って、雰囲気がすてきだった上智大学を目指すことにしました。夏まではセンター試験の勉強もしていたけど、上智のロシア語は公募推薦の試験があったので、志望校を決めてからは小論文とロシア関連の勉強に絞りました。

 出題の形式や傾向を把握するために、過去問も解いたのですが、数が多くなかったので、一通り解いたら、あとは得意の歴史や文化を中心に勉強するようにしました。ロシアに関しては、参考書にあまり載っていないので、ここでも事典を活用。小論文は、「日ロ交流の歴史」などといったテーマについて時間を決めて書いて、学校の先生に添削してもらっていました。

 私立大学の付属高校だったので、そのまま進学する人が多く、ましてや同じ公募で受験する人は周りにいませんでした。試験のタイミングもセンター試験より早かったので、夏休みから試験直前まで、ほぼ一人で受験勉強をしていましたね。

■漫画やゲームもやった

 それでも、私は好きな分野を勉強していたので、苦労はそこまでなかったです。あまり根詰めないように、漫画やゲームも割とやっていました。「○時間勉強する」と決めても、出来ないときは本当に出来ない。勉強は時間で決めずに、やる気に応じてというやり方にしていました。直前期は、下手に現実逃避するよりも、勉強している方が落ち着きました。

 本番では、小論文は書けたんですけど、全然分からないロシアの問題が結構あって、筆記が終わった時は「大丈夫かな」と不安でした。でも、すぐに面接があったので、「ここで熱意を伝えよう」と切り替えました。自分がどれだけロシアが好きで、どんな勉強がしたいのか。1年生からの思いを面接官に言いました。合格が決まった時は、うれしかったのと同時に、公募以外の受験は考えていなかったので、ほっとしましたね。

■楽しかった大学生活

 上智の外国語学部はだいたいそうですが、1回授業に出席しないとついていけなくなるほどスピードが早く、出席のチェックが厳しい。ロシア語もやる気がない人にとってはつらい環境だと思います。でも私は、どの授業も面白かった。筆記体を習って、ロシア語の簡単な文章が書けるようになったり、レーニンやスターリン時代の政治経済を深く学べたりと、楽しい4年間でしたね。

 1年生の夏休みには、所属していたロシア語演劇部の合宿でモスクワに2週間行きました。現地の大学生の演劇を見て、向こうの大学寮に宿泊しました。日本ではロシアに悪いイメージを持つ人もいますが、交流した学生たちはアニメが好きで、一層ロシアが身近になりました。

 私は声優の桃井はるこさんに憧れて、高校生の時からなりたかった声優の仕事を大学2年生からしています。アニメでは、ロシア語を使うキャラクターやロシアの設定がある作品もあるので、そういう時はこれまでの経験が役立っています。ロシア好きなのを知ってもらって、日本とロシアの友好イベントに呼ばれることもあります。大学4年生の時には、モスクワであった「J―FEST」(日本大使館主催の現代文化の祭典)で、演じたアニメのキャラクターの声や歌を披露しました。ロシアに関わる仕事は、機会があればこれからも続けたいと思っています。

 私は高校生の時にロシアに出会って、大学でも思う存分、学ぶことが出来ました。受験生のみなさんも、大学で思い切り、やりたいことができると思います。今は苦しい時かもしれませんが、残り少ない貴重な日々ですから、頑張ってください。

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 うえさか・すみれ 神奈川県生まれ。上智大学外国語学部ロシア語学科卒業。2012年に声優デビューし、アニメ「中二病でも恋がしたい!」や「艦隊これくしょん―艦これ―」などに出演。17年1月も「超・少年探偵団NEO」(TOKYO MX)など多数のアニメに出演。16年12月には東京・両国国技館でライブを成功させるなど、歌手としても活躍。(聞き手・丹治翔)