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■藤村忠寿(HTB「水曜どうでしょう」チーフディレクター)

 今年は「水曜どうでしょう」の新作を撮影する予定です。2013年に放送されたアフリカ編以来ですから4年ぶりのことです。

 実は昨年も撮影する機運はあったんですが、それぞれスケジュールが合わずに先送りになっていました。昨年は大泉洋さん、大河ドラマ「真田丸」で大活躍でしたからね。そんな大泉さんから元旦早々にメールが届きました。「今年は水曜どうでしょうをやるということで気合が入ります!」と。どうやら、かなりやる気満々のようです。

 レギュラー放送をしていた当時は、ロケのたびに体調を崩し、ボヤいていた大泉さん。彼がロケの最中にこんなことを言ったことがあります。「どうでしょうのロケに楽しいロケなんてないんだ。出来上がったVTRが面白おかしいだけで、我々は誰も楽しいなんて思ったことはないよ」と。それは、本当にその通りなんです。誰もロケなんて楽しみにしていなかった。それよりも不安ばかりが先に立っていました。「このロケが面白くならなかったらどうしよう」って。でもそれは口に出さずに、気付かれないように、それぞれの胸の内にしまって、旅立つ日の朝を迎えていました。

 今思えば、僕が「水曜どうでしょう」のレギュラー放送をやめ、DVDの制作を始めたのも、そこにひとつの理由があったのかもしれません。6年間、不安を抱えて撮り続けてきたVTRはどれも面白いものばかり。それを編集し直してDVDにすることには、なんの不安もありません。「もう僕はあの、ロケに旅立つ朝の、緊張感に満ちた不安から解放されるんだ」と。

 僕らはあの頃、誰もロケを楽しみにしていなかったから、誰もが必死で「楽しもう」としていました。「面白くならなかったらどうしよう」というプレッシャーに押しつぶされないように、誰もが本気で「楽しい!」と思える瞬間を探し出していました。どんなに小さな出来事でも、それを面白おかしい出来事に変えようと必死だったと思います。

 仕事って、どうしたって遊びのように楽しくはないんです。遊びで野球をするのはとても楽しいけれど、プロの選手は常に不安と隣り合わせです。「打たれたらどうしよう」「打てなかったらどうしよう」と。でも試合に勝つためには、一流の選手になるためには、自分を無理やりにでも奮い立たせて「野球を楽しもう!」という気持ちになることが一番大事なんだと思います。ファイターズの栗山監督も言ってましたね。「その選手がキラキラしているかどうかを見てる」って。

 とても矛盾しているんだけど「仕事が楽しいなんてあり得ない」と僕は思っている、でもそれを「なんとか楽しくしよう」「なんとか楽しもう」とすれば、そこにこそ良い仕事が生まれるんだろうと。

 今年、それぞれに不安を抱きながらも、それでも必死に「楽しもう」とする4人が集まって「水曜どうでしょう」が始動します。