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 近年、抗菌薬が効かなくなる「薬剤耐性菌」が世界中で増え、問題となっています。昨年5月にあった主要7カ国(G7)首脳会議(伊勢志摩サミット)の首脳宣言にも、薬剤耐性菌への対策強化が盛り込まれました。

 薬剤耐性菌を知るために、まずは、抗菌薬について説明します。

 抗菌薬が開発される前は、非常に多くの生命が、細菌感染症で失われていました。細菌感染症とは、肉眼で見ることができない小さな微生物のうち、病原性の細菌によって引き起こされる病気です。人から人、あるいは動物から人、環境から人へなど様々な形で人の体内に入り込み、発熱などの症状をもたらします。

 抗菌薬の代表的なものが、1929年に英国の細菌学者フレミングが発見したペニシリンです。第2次世界大戦で、兵士の傷を介して流行した黄色ブドウ球菌を主な原因とした感染症に対してペニシリンは使用され、劇的な治療効果を示しました。ペニシリンは、青カビという微生物が作る抗菌性物質です。その後も、微生物由来で他の生物の増殖を抑制し、死滅させる物質が数多く発見され、改良が加えられました。様々な細菌に対して効果のある抗菌性物質が開発され、「抗生物質」と総称されるようになりました。ただ、近年では、微生物由来ではなく、完全に化学合成で作られる抗菌性物質も多くなり、専門家は「抗菌薬」という言葉を使用することが一般的になってきています。

 しかし、抗菌薬が実用化され、広く用いられるようになると、細菌も対抗策として耐性を獲得するものが出てきました。ペニシリンの場合も、細菌がペニシリンを分解する酵素を作り出すことで、殺菌されなくなりました。それが薬剤耐性菌です。他の抗菌薬でも薬剤耐性菌が出現しています。抗菌薬の開発は、それに対抗する薬剤耐性菌との戦いの歴史とも言えるのです。

<アピタル:医の手帳・薬剤耐性菌>

http://www.asahi.com/apital/healthguide/techou/(新潟大学医歯学総合病院 田辺嘉也 病院教授(感染管理部))