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 「不動産王」と呼ばれ、公職経験のない初の大統領が米国に誕生――。共和党のドナルド・トランプ氏(70)が20日正午(日本時間21日午前2時)、連邦議会議事堂前の就任式で第45代大統領に就任、トランプ時代の幕が開けた。就任演説では、国益を最優先する「米国第一主義」を掲げ、雇用創出や不法移民対策などを強調。排外主義的な発言などで「分断」が広がる中、どう米国を導くのか注目される。

 議事堂前の「ナショナル・モール」に集まった支持者から時折「USA」コールも起きる中、トランプ氏は就任式で宣誓。その後の演説で「ワシントンから権力をあなた方、国民に戻す」と強調した。「ワシントンは繁栄したが、人々は共有していない。仕事はなくなり、工場は減った」と述べ、既得権層を打ち崩し、中間層を底上げする姿勢を示した。

 大統領選勝利の原動力となった白人労働者層を意識してか、「2017年1月20日は、国民が再びこの国の統治者となった日として記憶されるだろう。我が国の忘れられた男性や女性が忘れられることはない」と訴えた。さらに「我々の素晴らしい国に、新たな道路、橋、空港、鉄道を作る」とも話し、雇用確保や社会資本整備を政権の最優先課題とする方針を示した。

 また、「この日から、America First(米国第一主義)になる」と米国益を最優先する考えを強調。「貿易、税制、移民、外交のすべての意思決定は、米国の労働者の恩恵になるようにする」として、環太平洋経済連携協定(TPP)からの離脱や北米自由貿易協定(NAFTA)の再交渉を念頭に、保護主義的な貿易政策を打ち出す姿勢を示した。不法移民の排斥やイスラム教徒の入国禁止などを選挙戦で訴えたことから広がった米社会の分断を修復するため、「米国は一つになった時、止められない」と国民の団結を呼びかけた。

 また、新政権は発足当初から、犯罪歴のある不法移民の措置や、メキシコとの国境での壁建設、国内のテロ対策など重点課題に着手する方針だ。トランプ氏は演説の最後、「我々は共に、アメリカを偉大にする」と選挙中のスローガンで締めくくった。

 米メディアなどが調査した、トランプ氏の就任直前の支持率は4割にとどまり、これまでで最も不人気な大統領と言われている。就任式では、トランプ氏に反発する民主党下院議員ら約60人が「分断と憎悪を説く人物を祝福できない」(キース・エリソン下院議員)などと式典を欠席。会場周辺でも「人種差別主義者」「性差別主義者」などと非難するプラカードを掲げた抗議デモが起きた。式典会場周辺にあるカフェの窓ガラスが割られるなど、一部が暴徒化。警官のほか装甲車などが展開して厳戒態勢が敷かれるなど、緊張感に包まれた就任式となった。(ワシントン=佐藤武嗣五十嵐大介